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有岡の急な告白に、伊野尾の思考は追いついていなかった。
"…どういうこと…?
有岡くんの好きな人は俺、で…俺に近づくために、あの子のことは好きじゃないのに付き合ってた…?"
「……なんで……いつから?…なんで、俺のこと…」
「…伊野尾くんは俺の…恩人だから」
「…恩人?」
「…俺さ、大学に入ってやったバイト、10個以上あるんだ。
どのバイトも全然やる気出なくて、全然続かなかった。
今の工事現場のバイトもそう。正直きついし、自分のしてることに意味が感じられなくて、すぐ辞めようと思った。
…伊野尾くんに会うまでは…」
____1年前
「おいバイト!この仕事舐めてんだろ。生半可な気持ちでやるくらいならさっさと辞めちまえ!」
"…何だよ、別にそこまで言わなくていいじゃん"
上司が去った後、有岡は不服そうに独り言を呟く。
「言われなくても辞めてやりますよー」
今日のシフトは昼から夜まで、ただひたすらに交通警備。今回の現場は大学の近くのため、目の前を同じ大学の学生が通ることが多かった。
"…みんな、同じ大学の奴がこんなとこでバイトしてるなんて思いもしないだろうな。その証拠に、俺のことなんて誰も見向きもしない"
「…俺、いる意味あんのかな…」
考え事をしながら不意に下を向くと、軽く目眩がして視界がぼやけた。
"あ、やばっ…"
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作者名:むにこめ | 作成日時:2022年11月28日 22時