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「なにしてんの?」
「!有岡くん…」
「大貴くん…!あの、これは…」
会話を遮ったのは、偶然居合わせた有岡だった。
ズカズカと二人の間に入り、有岡は伊野尾の手を強引に掴んだ。
「…伊野尾くん、ちょっと来て」
「え?ちょっ…」
"…なんで、俺なんだよ…"
嫌な筈なのに、有岡に触られたところから段々と熱が伝わってきて、その力強さに抵抗できない伊野尾。不覚にも、"あいつを連れ出さずにいてくれてよかった"なんて思ってしまっている自分がいた。
「…ちょっと、有岡くんっ!痛いっ…てば!」
やっとの思いで掴まれていた手を振り払う伊野尾。
下を向く有岡の表情が見えず、不安になる。
「その…あいつと喋ってたのは…ごめん。でも…でも俺はもうっ…」
"もう…?俺、何言おうとしてるんだろ…"
暫くの沈黙の後、先に口を開いたのは有岡だった。
「…そういえばさ、
前に言ってた"お仕置き"、まだだったよね?」
「え…っ」
今までになく、冷たい目。
声色はいつも通りなのに、そこに温度を感じられない。
伊野尾の胸がズキズキと痛む。
「…嫌って言っても、手加減しないから」
"…いつからだろう。
有岡くんに触れられることが、嫌だなんて思わなくなったのは…"
「……うん」
"有岡くんが何考えてるのか、分かんないよ…"
伊野尾は小さく頷くと、無言で歩き始める有岡の後ろを黙ってついて行った。
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作者名:むにこめ | 作成日時:2022年11月28日 22時