それは突然に

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広いドーム内を歩き、ようやく自分たちの席にたどり着いた。


『ここまで来るだけなのにこんなにも疲れるなんて思ってもいなかったよ。それにしても迫力すごいね！』


「試合始まったらこんなもんじゃないですよ！もっとすごいんです！」


初めてドームに来た私はお客さんの熱量と会場の迫力に圧倒された。


グラウンドに目をやると、選手たちは試合前のウォーミングアップを行なっていた。選手を目で追っていくと、背番号９の姿がそこにはあった。あの時とは違う真剣な表情や、緊張感がそこにはあった。


ふと周りを見渡すと、彼のユニフォームを着た女の子達がたくさんいた。


(私こんなにすごい人と話してたんだ)


ようやく気付いた。
卓の人気とすごさが身に染みる瞬間だった。





「Aさん！いますよ、中島選手！(笑)」


『だからー、そんなんじゃないから！』


あかりちゃんに冷やかされながらも、卓を目で追ってしまう自分がいた。


すると、一瞬パッと目が合ったような感覚がした。


(気のせいだよね)





ようやく試合が始まり、試合も中盤チャンスで卓に打席が回ってきた。

(お願い！)


カキーーーーーーーーーン


「『やったー！！！！！！！！！！』」



その試合は卓の活躍もあり、ファイターズは勝利。
ヒーローインタビューはもちろん卓だった。


そんな時ふと思った


(やっぱり私と卓では住んでる世界が違うんだ)


一回会っただけでいい気になって少しでも舞い上がっていた自分が恥ずかしくて、ものすごく情けなかった。

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