それは突然に

◎12(side卓) ページ12

今日からドームでの3連戦。
眠い目をこすりながらいつものようにロッカールームに行き、自分のロッカーに座っていると遥輝が不気味な笑顔でこっちへと駆け寄ってきた。



『なんや、きもちわるっ』

「卓さん、聞きたいっすか？」

『なに？』

「え〜どうしよっかな〜」

『え、なになに』



もったいぶる遥輝に昨日のことがあったせいか少しばかしイライラしていると遥輝が隣に腰掛けこう言った。



「今日Aちゃん来るらしいっすよ』

『、は？ウソやろ』

「いや、ホンマに！さっき高橋さんと話してたら奥さんとAちゃんが見にくるって言ってましたもん」

『まじかよ』


Aちゃんに会えるかもしれへんなんて言いながら自分のロッカーの元へと戻って行く遥輝。



それからの俺はものすごく動揺を隠せないでいた。

スパイクを履く時も、


11「卓さん、それ左右反対ですよ」



しまいには、ロッカーからグラウンドに向かう時



6「お前なにしてんねん、ユニホーム逆やぞ」


周りのチームメイトはみんなそんな俺をバカにしてスマホでカシャカシャと写真を撮りまくってきた。




今までにこんなバカみたいな経験をしたのは初めてだった。
昨日遥輝に宣戦布告された瞬間から可笑しいくらいに焦っている自分がいて、彼女にあったあの日から好きとは違う感情が心の中をうろついていた。




(情けねーな、おれ)




情けない自分に喝を入れ、試合へと向かった。

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