犬、夜に溺れる ページ3
石で出来た階段に座り、買ったばかりの真っ新なノートをパラパラとめくった。このノートを使って課題をやらないといけないのに、と思いながらも大きな川を越えた遠くの方に小さく光る月を眺める。
勢いで向かった河川敷へ着いた頃には、もう涙など乾いていた。あんまりにも本気で自転車を漕いだお陰で、泣くどころじゃなくなったらしい。堤防には思ったよりも人が居て、大型犬の散歩をする人やコートでバスケの練習をしている人、そしてロードバイクで颯爽と目の前を駆け抜けたサラリーマンを目で追ったあたしは溜息を吐いた。
「なにやってんだ……」
誰に聞かせるでもない、自分へ問いかけるような独り言を漏らす。思い浮かぶのは、レジの向こうで驚いて不安そうにしていたあの店員さんの顔だった。元々部長だろうが、彼の初恋の相手だろうが、あたしにとってはただの他人。どうしてそんな簡単な事をすっかりと忘れて、知らない人に横柄な態度を取ったのだろう。
それに加えてとんでもないLINEを彼へ送ってしまった。
河川敷にいるから会いにきてよ
仰天メッセージには速攻で既読がつき、予想通りのような返事が来た。
てつや河川敷?
りょうといるの?
てつやなんかあったの
え??
てつや送る人間違えた?
別に間違えてない。あれだけ苛立って泣いてた割には、きちんとてつやを選んで送った。
だけども画面の向こうから伝わる心配するような返信が来た途端、あたしはヒュンと我に返ったような感覚に襲われたのだ。なんだかおかしな事をしているなぁ、と。
てつや大丈夫?
間違えた
色んな意味で
てつやまだ河川敷にいる?
すぐ行くから待ってて
大丈夫だよ
居るけどもう帰る
メッセージが見事にすれ違い、それから既読がつかなくなった。電話しようかと思ったけど、どうやらあたしは本当にてつやに会いたかったらしい。長く迷う事をせず、電話のマークを押さずに画面を消した。
川から流れてくる冷たい空気に晒されたあたしの頭は既に冷静で、静かに流れる川を眺めながら彼が来るのを待つ。もしここでりょうを呼んでいたら、あたしは彼に何を言っていたんだろうと考えながら。
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あおい(プロフ) - 一気見してしまいました！続きが気になります…！ (7月29日 19時) (
レス) id: 5d8097aa88 (このIDを非表示/違反報告)
こなん - 1番好きな雰囲気のストーリー！続きも楽しみに待ってます！頑張ってください！！ (2022年10月20日 15時) (レス) @page14 id: d5939a1a6f (このIDを非表示/違反報告)
あむ(プロフ) - 面白くて切なくて最高です！続き楽しみに待ってます！頑張ってください^_^ (2022年8月15日 15時) (レス) @page14 id: 85ad4508c6 (このIDを非表示/違反報告)
匿名(プロフ) - くぅかなさん» コメントありがとうございます！そう言っていただきとても嬉しいです。甘酸っぱい学園青春ストーリー！…みたいなのを考えていましたが、昼ドラのような雰囲気になりそうな気配を見せていますね。これからどうなるのか最後まで見守っていただければと思います！ (2022年7月7日 9時) (レス) id: c0fa65fbb4 (このIDを非表示/違反報告)
くぅかな(プロフ) - やばい！一気読みしてしまった！続き待ってます！ (2022年7月3日 9時) (レス) id: c4e0c26ecd (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：匿名
| 作成日時：2022年4月16日 11時
