きっと、ずっと、そばにいて。

お前やねん side H ページ38

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物心ついた頃から、隣にAがおった。

俺にとってはそれが自然で、ずっとこの距離でいれる思ってた。

案の定大学も一緒で、山崎咲良っていうかわいい彼女もできて、俺は幸せやった。

せやけどそんなある日、Aが俺らと距離を置くようになった。

俺にはその理由がようわからへんくて、噂で耳にした、｢AAがパナソニックから誘われてるらしい｣っていうんを馬鹿みたいに信じた俺は、パナへの入団を決めた。

Aがおらへん未来なんか、俺には想像でけへんかったから。

それでも、咲良のことは大好きで。

今まで耳にタコができるくらい悪い話を聞いてきたけど、俺にとっては大切な人で。




久原｢俺、ほんまアホやわ…｣

｢…｣

久原｢最近、他に好きなやつがおるかもしれへんって話したやろ？｣

｢うん…｣

久原｢それ、お前やねん｣

｢…えっ？｣




Aに対する独占欲が、最近、溢れ出てくるようになってきた。

パナに入団して過呼吸で倒れたA。

そりゃ心配やったけど、俺が見舞いに行かへんでも平気やろって思うてた。

せやけどAが退院して、昔ほど俺と話すこともなくなった。

その代わり、一緒におるんは山内さんや清水さん。

…なんでやねん。

俺には全然、笑いもせえへんのに、なんでそんなに笑顔を振りまいてるんや。

誰にも見せたなくて、今まで通りの距離感に戻りたくて。

気づいたら、Aのことばっかり考えよった。




久原｢そんなときに、咲良から別れよう言われて、今までは｢嫌や｣って言いよってんけど、今回は何も言えへんくて｣

｢…｣

久原｢Aが、好きな奴おるなら別れろって、言うてくれへんかったら、俺まだ迷ってたわ｣

｢え、じゃあ…｣

久原｢W杯始まる前には別れとったわ｣




さすがにこんなとこで抱きしめてるのはよくないなってふと思う。

あ、憲太郎おるやん。




松林｢…見せつけんなよ｣

｢えっ、やだ、松ケンいたのっ？｣

松林｢お熱いことで。くりさんが｢俺らのAちゃんが取られた｣って嘆いてるよ｣

｢私はいつでもサントのものよって言いに行かなきゃ！…久原、荷物取ってくるから待ってて｣




…アホ言え。

Aは俺のもんや。

そう言いたくてぐっとこらえる。

第一、Aが好きな奴なんて俺知らへんやん。

しばらくして、Aが出てくる。

手を引かれて、Aの運転で着いたのはマンション。

新しい部屋は、俺の知らへん匂いがした。




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