きっと、ずっと、そばにいて。

いたかも ページ37

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｢っ、湧さん！｣

山本｢はいはいはい！｣

藤中｢っ、うぇーい｣




残ってたメンバーでほんとにミニゲームが始まった。

恐縮ながら私も入れてもらい、松ケンの全力サーブを必死に拾う。

大学の頃なんて比べ物にならないくらい成長してるし。




｢オーバーワークだぞ松ケン！もっと手抜いてサーブしろよ！｣

松林｢お前に手抜いてたら綺麗に拾われるだけだろ！｣

山本｢全力で打っても綺麗に拾われてんじゃねえか｣




山本湧さんが笑う。

えらく可愛い顔してんな湧さん。

5対5のミニゲームだけど、改めて見るとすごいメンツ。

藤中謙也さん、ちょーかっこいいの。

秦くんのスパイクも思ったよりパワーがある。

それから、久しぶりに見る鶴田さんのレシーブが素晴らしすぎる。

ミニゲームが一段落して、気づいたこととかもノートにまとめる。

まだまだ元気そうな選手に見蕩れていると、スマホが鳴った。

…アキさんだ。




｢もしもしアキさん？｣

山内｢どう？サント楽しい？｣

｢楽しすぎる。選手が魅力的だよ｣

山内｢なに、パナに魅力は無いっての？｣

｢違いますー｣




アキさんと話すのも久しぶりすぎて、独特の低音が心地いい。

しばらく近況報告したり、W杯の話したりしてると、｢あ、そういえば｣ってアキさんが言う。




山内｢そっちにさ、翼来てない？｣

｢久原？なんで？たぶん来てないですよ｣




アリーナを見渡しても久原はいない。

え、来てないよね？

一応出入口の方へ歩いて行ってみると、外の隅の方でしゃがみ込んでる姿が見えた。

…まさかね、そんなこと。

だんだん夜も寒くなってきてるのに、薄着だ。




｢…いたかも｣

山内｢あ、やっぱ？｣

｢な、なんで？｣

山内｢…お前が移籍すること、たぶん知らなかったの翼だけでさ｣

｢…あ、そうか｣




久原には直接伝えてない。




山内｢パナの練習が終わって、翼からなんでAがいないのかって聞かれてさ、移籍したって言ったら血相変えて出て行ったからもしかしてって思って｣

｢そ、そっか…｣

山内｢…無理すんなよ。キツかったら追い返していいから｣

｢…うん、ありがとう｣




じゃあ、またなってアキさんが言って、電話が切れる。

会うのは、1ヶ月ぶりくらい。

ちゃんと話すのは、パナで倒れた日以来。

ドキドキする心臓を落ち着かせて、1歩を踏み出す。




｢ひ、久原、？｣

久原｢…はぁ、やっとみつけた｣




気だるそうに立ち上がった久原が、私に倒れるように抱きつく。

…まって、パニック。




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