きっと、ずっと、そばにいて。

10年 ページ28

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side 柳田




柳田｢もしもし｣

山崎｢えっ、はい。あの…｣

柳田｢全日本キャプテンの柳田です｣

山崎｢あっ！この前DM送らせていただいたんですけど｣

柳田｢見てません｣

山崎｢え｣




こいつが山崎咲良か。

Aに電話がかかってきたときに見えた表示は｢山崎咲良｣。

祐希が山内に｢Aさんが泣いてる｣って言ったときに、反射的にやばいって思った。

ボロボロ泣いて、過呼吸になりかけてるA。

思わずスマホを奪って、山崎咲良と話をする。

Aに何言ったのかって聞けば、Aから貰ったノートを捨てたって。




柳田｢お前があげたノートを捨てたって言ってるけどほんとか？｣

｢！あげてない…、バレーのことわからないって言うから、貸してただけ…｣

柳田｢貸してただけらしいんですけど｣

山崎｢えっ、私、貰ったと思ってました…｣

柳田｢…まあ、今はそんなのどっちでもいいけどさ、それどんなノートなの｣

山崎｢…えーっと、｣

｢…私が、バレーを始めたときから書き留めてるアドバイスや、ルールがまとめてあるノート｣

山内｢は…｣

｢約10年間の、私の血のにじむような努力で書き上げたノート、！｣




頭に血が上るのがわかる。

落ち着け、俺。

熱くなってどうする。




柳田｢…なんで、捨てたんですか｣

山崎｢あのー、大学の頃の、喧嘩の腹いせで…、あは｣

柳田｢何笑ってんの｣

山崎｢えっ｣

柳田｢たった一時の感情で、友達の10年の努力を捨てたのに、なんで笑ってんだよ｣

山崎｢…｣

柳田｢時間は取り戻せないんだぞ？お前、自分のしたことわかってんのか！｣




思わず声を荒らげる。

電話の奥で、山崎咲良が泣き始めたのがわかった。




柳田｢Aはな、お前のことを仕事のできるマネだって褒めてたんだぞ？親友だって言ってたんだ｣

山崎｢…っ｣

柳田｢お前だってそう思ってたんじゃないのかよ…！｣

｢…マサさん、もういいよっ、｣

柳田｢よくねーだろ｣

｢ううん、代わって、？｣




悲しみで沈んだAに、渋々スマホを渡す。

すると、一度深呼吸をしたAが、今まで以上に凛と胸を張って言った。




｢咲良ごめん。その喧嘩の内容は私はよく覚えてない。

だけど、私の10年を簡単に捨てれる程の怒りだったんだから相当酷いことしたんでしょ？私。

本当にごめんね。だけど、私はノートを捨てたあなたを許すことはできない。

…あのノートは、そんなに安いもんじゃない。

友情が、謝って簡単に回復する物だと思わないで｣




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