きっと、ずっと、そばにいて。

可愛げ ページ19

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｢ちょっと久原、いい加減しゃべって｣

久原｢…｣

｢もう…、何にする｣

久原｢カレー｣

｢でしょうね｣




ずっとしゃべらない久原。

メニューを聞けば｢カレー｣とだけ言う。

私はじゃあハンバーグセット。

ボタンを押してやって来た定員さんに注文する。

そしてまた沈黙。




｢何もしゃべらないなら今からでも石川くんと焼肉行きたいんだけど｣

久原｢…さっきまで目も合わせんようにしとったくせにもう仲良うなったんか｣

｢ええ、石川くんは目が覚めたみたい。どっかの誰かさんと違って｣

久原｢…それでも、俺は、｣

｢咲良が好き、でしょ？何回言っても気持ちは変わらないんだもんね｣




そう。

久原には何回も、咲良はやめとけって言ってる。

でもその度に、｢俺はあいつのそういうところも含めて愛しとんねん｣ってどこぞのポエムみたいなことを言いやがる。

…それはあれです。

あいつのことを心から愛してやれるのは俺だけだっけ思ってる自分に酔ってるだけです。




｢あー、なんで男って馬鹿な女が好きなの｣

久原｢馬鹿やなくて強い女よりか可愛げがあるからやろ｣

｢おう…、何も言えない｣

久原｢お前も咲良を見習えば？｣

｢え、咲良を見習ってたくさんの人たちを傷つけろって言ってんの？頭大丈夫？｣

久原｢ちゃうわ。可愛げを持てって言っとんねん｣

｢あいにく、プロバレーチームのマネたる女が可愛げなんて持ってはいけません｣

久原｢…｣

｢男にうつつを抜かしてる暇があったら、戦術の研究でもなんでもするわ｣




そのとき、おまたせしましたーってカレーとハンバーグセットが運ばれてきた。

めっちゃジュージューいってる。

美味そう！

いただきます！って頬張ったら、これまた美味い。




｢…美味すぎる｣

久原｢そんなボリューミーなの…、ふとんで｣

｢は？黙ってろ｣

久原｢そうやなくても最近ぽっちゃりしてきたんやから｣

｢…ああ、久原にはそう見えるのか｣

久原｢は？なにが｣




私が最近ぽっちゃりしてきた。

それは間違いない。確かに体重は増えた。

けどそれは、大学の頃の体重に戻ったってことだ。

倒れてから、食べ物が上手く喉を通らなくて何度も吐いた。

やっと食べれるようになって、痩せてた体重もだんだん戻ってきたんだ。

…久原は、私のことなんて見てないのか。

そりゃそうよね。

入院してたときもお見舞いなんて来なかったもん。




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