非合理的か感情か：赤 ページ10
2038年。
人間とアンドロイドが共存する世界。
私は人間として生まれた。
でも数ヶ月前、両親が死んだ。
二人がいなくなる前日に、新しい家族だと言ってアンドロイドがやってきた。
名前は弟者と呼ぶらしい。
私はアンドロイドとは言い難いほど、彼が本当の人間のように思えた。
話せば普通に帰ってくるし、少し感触に違和感はあるけれど、やはり人間そっくりだった。
そして両親が死んで、精神的ショックにより私は声が出なくなった。
その時傍にいてくれたのが弟者で。
思わず彼に抱きつき子供のように泣きじゃくっても。
弟者は優しく抱きとめてくれた。
それから現在。
親戚と共に生活を始めてから数ヶ月。
お互いどこか余所余所しくて、お世辞にも居心地がいいとは言えない。
その原因は、弟者だった。
親戚は弟者に関わらず、アンドロイドに嫌悪感を抱いていたのだ。
簡単に言えば変異体が増えたから。
この前テレビで見かけた。
アメリカのアンドロイドが感情というものをもち、変異体になり、平和的反抗を起こしたのだと。
それを見て、私は第一にこう思った。
弟者もいつかは、自分のもとを離れていってしまうのではないかと。
それが何より怖くて、無意識に彼の腕を掴んだこともあった。
弟者もいなくなってしまうと、私はもうどうしていいのかわからなくなる。
「どうした?」
声がでない今、音声プログラムで彼の名前を呼ぶ。
それが同仕様もなくもどかしくて、自分の声で弟者を引き止められないと思うと、すごく怖くて、悲しかった。
[弟者は…]
そこまで打ち込み、手を止めた。
[何でもない]
彼の自由を決めていいのは私ではない。
そう思ったから、本音を隠して微笑んだ。
その数日後、いきなり親戚が豹変した。
目を血走らせ、整えていた髪は荒れて。
「仕方なく引き取ってやったけどもう限界、声の出ないアンタは邪魔でしょうがない!!」
うざったいアンドロイドを引き連れて。
彼女はそう言った。
私は何もできず、それに怯えていただけだった。
声も出ないから抵抗できず、とうとう手まで出された。
すごく、殴られたところは痛かった。
何よりも、居場所がないことが、一番苦しかった。
(続)
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作者名：sky | 作成日時：2018年5月17日 23時
