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心の天気:赤 ページ5

今日は降らないって言ってたのに。
空から落ちてくるものを恨めしく見つめる。
仕事が終わり外に出れば、お天気のお姉さんが眩しい笑顔で伝えていたものと全く逆な空になっていた。
ひとつため息をついてから意を決して容赦なく降る雨の中を駆けた。

アパートにつけば、私の部屋の電気がついていて。
消し忘れたかな?なんて思いながら鍵を開け中に入ると、その途端こちらに近づく足音が聞こえた。

「A、おかえ…ってびしょ濡れじゃん、傘は!?」

姿を見せたのはいるはずのない弟者、それに私は目を見開いた。
まぁ…合鍵は渡してあるからいても不思議じゃないんだけど。
今日おついちさんとゲリラ放送するって言ってなかったっけ。

「天気予報見たけど外されて…ていうか弟者どうしてここにいるの?」

「おついちさんに急用ができちゃってさ、することもないからAに会おうと思って、ってそうじゃない!!」

タオル持ってくるから動かないでと言われ、バタバタと慌ただしく彼は動き出した。
…さり気なく嬉しいことを言われた。
タオルを持ってきてくれて頭に被せ少し雑に頭を拭いてくれる。

「風邪引いちゃうからちゃんと気をつけて」

「うん、ごめん」

そう言って微笑むと、彼の拭いてくれている手が止まる。
どうしたのかと不思議に思っていると、タオルごと引き寄せられ、私はそのまま前に倒れた。
そして気づけば目の前には弟者の顔があって。

状況を理解しきれないまま触れ合った唇はゆっくりと離れて。
弟者は何故か頬を少し赤く染め、こちらを見ていた。

「…おかえりのキス、してなかった」

「…ただいま」

なにそれ、なんて笑いそうになった。

外れた天気予報のせいで気分は最悪だったけど、こういう時間が過ごせるなら良いかな、と思った。

「ほら、このままお風呂入って」

「うん…弟者」

手を離し後ろを向いた彼に声をかけると、再びこちらに振り返る。
私は笑って、彼に言った。

「ありがとね…大好き」

そうすればほら、私の大好きな照れた顔が見れるから。
天気は雨でも、心は眩しいほどに晴れていた。

距離と違和感:青→←ごめんの優しさ:緑



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作者名:sky | 作成日時:2018年5月17日 23時

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