ごめんの優しさ:緑 ページ3
その日の僕は苛ついていた。
単純に、不幸の連続が続いていたから。
編集途中の動画が最近気温が急に暑くなった為画面がフリーズしたかと思いきや、その途中動画が消えていたり。(バックアップしておいたから動画自体に影響はないが振り出しに戻った。)
自分が録ったはずの実況動画に不備があり、ゲーム音だけ載っていなかったり。(少し長めなので、どうしようかと処理に悩む。)
そんな些細なことなのに、何故か今日はその後始末で睡眠不足のせいもあるのかイライラしていた。
そして家に来ていたAにも、悪くないのにその苛つきをぶつけてしまったのも覚えている。
「…おついちさん、その、ごめんなさい…カップ落としちゃって」
すごく申し訳なさそうに言う彼女に、優しく対応してあげればよかったのに、その時の僕は余裕がなく、額に手を当てため息をついた。
「Aって抜けてるトコあるよね」
「ご、ごめんなさ…」
肩を竦ませ、悲しい表情をするAに気づくことができず、一度吐き出した言葉は止まることを知らない。
「謝れなんて言ってないよ…前から思ってたけどさ、そういうのどうにかなんないわけ、正直僕疲れるんだけど?」
そこまで言ったとき、初めて自分は気づいた。
僕は一体何を言っているんだと。
ハッとしてAの顔を見れば、一瞬だけだったけど見えてしまった。
目を見開き酷く悲しそうに顔を歪ませていたのを。
でも彼女はすぐに顔を俯かせ、自分の服を強く握り締め何かに耐えるように、隠せていない表情をチラつかせながら微笑んだ。
「そう、ですよね…」
そこで初めて冷静になることができた。
Aは前々から自分がドジをしてしまうことに嫌悪感を抱いていたことに。
僕はそれを一番良く知っていたのに、彼女の傷口に塩を塗るようなことを口にしてしまった。
「A、違っ…」
「今日は!」
…帰りますね。
そう言って鞄を雑に取り走って去って行った。
僕は追いかけることもできず、ただその場に立っていた。
そしてその不幸は、終わってなんかいなかった。
次の朝スマホでメールを確認すれば、兄弟からAが事故に遭ったと言う文が綴ってあった。
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作者名:sky | 作成日時:2018年5月17日 23時