もしも夢で言えたなら【短編集】 (ページ15)

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Remember：青ページ15

｢A｣

優しい声が聞こえ、涙で濡れた顔をゆっくりとそちらに向けた。
声の主は悲しそうに、苦しそうに顔を歪めていたように見えたけど、私の方に近寄る。
誰かもわからない人に警戒するようにベッドに座る後ろの壁に下がる。

震える息が漏れる。
目の前の男の人は私に近づく。
手がこちらに向かう。

なに。
何をするの。
このひとは、だれなの?

何がわからないのかも、それすらわからなくて、恐怖に目を瞑った。

すると、男の人は私の頬に優しく触れる。
それに驚いて反射的に相手の顔を見た。

｢A｣

また優しい声で私の名前を呼ぶ。
そして柔らかく微笑み身体を包んだ。

｢大丈夫、大丈夫だ｣

その一言が、何故かすんなりと心に染み込んで。
よくわからない感情のまま、再び涙が溢れ出た。

｢どれだけAが、俺のことを思って、突き放そうとしても｣

俺は絶対、Aから離れない。
その言葉が、どうしてかわからないけど酷く嬉しくて、安心できて。

私はまた、声を上げて泣いたんだ。

(続…?)