55話 心配(伊黒side) ページ18
俺は昔から落ち着いていて、動揺しにくい性格だった。
まあ、前世で20過ぎまで生きた記憶が物心つく頃にはあったのだから、当たり前と言えば当たり前だろう。俺は普通ではない。
前世、俺は仲間を助けることができなかった。
好いた女性の一人すら満足に守ることができず、そんな人生を悔いていた。いっそのこと、全て忘れてしまえれば良かったのに。
そんなある日、俺に子供を預かってくれないかと連絡が来た。
昔から俺の母親と面識があり俺とも時々会っている人からだった。
そして_______その子供というのは、菅野Aだった。
俺は菅野Aは嫌いだ。煩いし、すぐに弱音を吐くし、顔も綺麗ではないし、力もなかった。
それでも何故か俺はソイツの最後を見届けることになり、しかもその事を次の人生にまで持ち越すことになるとは。
『伊黒さん!私、今日は剣道部に寄るので別々に帰りましょ!六時には帰りますので!』
そう言うAに俺は了承したし、Aもしっかりとうなずいた。なのに、なのに何故。
時計を見て時刻を確認すると、午後七時過ぎ。言われていた時刻から一時間経っても帰ってこない。急いで冨岡に連絡を取ったら、学校はもう出たはずだと言われた。
.......鬼なんていない、もう俺達の代で終わらせた。バカなことを考えるな。
そう何度考えても心は落ち着かず、風呂に入る気にもなれなかった。
怖い。
そう思っている自分に気がついて、自分の手がひどく汗ばんでいることを自覚した。
もしも、帰ってこなかったら。もしもこの時代にも鬼がいたのなら。もしもAが、どこかで一人で殺されてしまっていたら。もしも、もしも、もしも......
悪い予想しか頭に浮かばない。とうとう俺は玄関の前に立ってAの帰りを待つ。だがインターホンは鳴らない。
ピンポーン
その音が鳴ったとき、俺は柄にもなく焦って扉を開けた。そこには気まずそうな顔のAがいる。
『あ、え、伊黒さん?す、すみません。お、遅くなっちゃって』
「お前、」
驚いて叫ぶAの体を引き寄せる。
「どれだけ、心配したと....本当に、良く生きて」
『え、あ、』
「また失ったのかと、思ったんだからな......」
それを聞いたAは、震える俺の体に、ゆっくりとその腕を回した。
ただそれだけのことなのにとても安心して、何故か、少しだけ涙が出てしまった。
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セブンス・エイカン(プロフ) - 点P撲滅隊リーダー兼隊長兼事の発端者。さん» 21才組(冨岡、伊黒、不死川)の3人ですね(キメ顔) (2021年5月4日 18時) (レス) id: b773bec88c (このIDを非表示/違反報告)
点P撲滅隊リーダー兼隊長兼事の発端者。(プロフ) - セブンスさんの推しキャラは誰っすか?わいは胡蝶三姉妹ですっ (2021年5月4日 0時) (レス) id: 162be80354 (このIDを非表示/違反報告)
セブンス・エイカン(プロフ) - 宙さん» かもしれないですねwwwwコメントありがとうございます! (2021年2月4日 23時) (レス) id: b773bec88c (このIDを非表示/違反報告)
宙(プロフ) - 夢主冨岡さんの言葉足らず写った?w (2021年2月3日 21時) (レス) id: a1083db659 (このIDを非表示/違反報告)
セブンス・エイカン(プロフ) - 永久さん» 炭治郎マジで自覚なしで赤面狙ってくるのヤバイよね(((((作者死亡のお知らせ (2020年2月2日 23時) (レス) id: c11c2be27e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:セブンス・エイカン x他2人 | 作成日時:2020年1月3日 23時