397話 笛 ページ34
突然その動きを止めた鬼に、私たち三人は続けて攻撃を畳み掛ける
私は、この鬼の過去を知らない
鬼になったときの経緯も、何を思って今ここに立っているのかも
そういうこと全部、私は何も知らない
「オラァァァ!!とっとと灰になれ鬼ィ!!」
『!!鬼の体が、だんだんと崩れて....!』
だけど崩れていく鬼の姿は、悲しいような無念なような
......どこか、そんな同情を誘うように感じた
可哀想だ、この鬼が
自分でもどうしてかわからないけれど、この鬼の記憶を見てみたくなった
『........』
チン、と刀を鞘に収めて、私は崩れていく鬼の側に寄る
____鼻がツンとするような匂い
きっと、こんな匂いのことを炭治郎は深い悲しみ匂いと言うだろう
「!?.....流星、何をしている!!まだ油断するな、回復するかもしれん!」
『......いえ。もう大丈夫、だと思います』
何の警戒もなしに鬼の体に触れようとする私に、悲鳴嶼さんは焦ったように私を引き離そうとする
私は優しく首を振って、悲鳴嶼さんや不死川さんを制してから
そっと、あともう僅かになっている鬼の体に触れた
継国巌勝_____この鬼の人間の頃の名前は、そんな風に言うらしい
″憎い憎い憎い憎い″
″何故だ?何故私は緑壱に勝つことができぬ″
″お前の顔を見ただけ、お前の声を聞いただけで吐き気がする″
″____それなのに″
″何百年も生きていて、鮮やかに記憶しているのは一番忘れたかったお前の顔″
″嗚呼″
″何も、何も手に入れることができなかった″
″家を捨て妻子を捨て人間であることも捨て″
″子孫やその仲間を切り捨て、侍であることさえも捨てたというのに″
″何故私は何も残せない″
″何故私は何者にもなれない″
″何故、私とお前はこれ程まで違う″
″結局お前には、あの女______″
″唯一日の呼吸の派生でない存在の呼吸を作り出した、
″教えてくれ緑壱″
″私は、いったい何のためにこの世に生まれてきたのだ″
そこまで読み取ったところで、プツリと記憶の映像は途切れる
存在の呼吸を作り出した_______在世心寿?
しかしその続きの記憶を私が見ることなく、鬼の体は全て灰となって消えてしまった
.....鬼の体があった場所には
かつてこの鬼が弟にやったという笛と、着ていた着物だけが残っていた
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セブンス・エイカン(プロフ) - キメツ好きさん» 好きですか!本当ですか!?(喜)無一郎君はできれば助けようと思ってます、コメントありがとうございます.....!じゃんじゃん(?)救済して行きますよー! (2020年6月22日 22時) (レス) id: b773bec88c (このIDを非表示/違反報告)
キメツ好き - はぁぁぁ泣けますね.....やだ好きです.....()御館様もしのぶさんも助かって良かった!!玄弥くんは.....悲しいけど.....無一郎君は助かるんですかね?救済してください!お願いします! (2020年6月22日 17時) (レス) id: b2fc3cf6a1 (このIDを非表示/違反報告)
セブンス・エイカン(プロフ) - 中トトロさん» ありがとうございます!面白いと言ってもらえて嬉しいです!更新頑張りますー! (2020年5月21日 7時) (レス) id: b773bec88c (このIDを非表示/違反報告)
中トトロ(プロフ) - 続編おめでとうございます!とっても面白いです!これからも更新頑張ってください!楽しみにしてますよ! (2020年5月20日 23時) (レス) id: b4064f663e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:セブンス・エイカン | 作成日時:2020年5月17日 20時