03話 ページ5
最初の被害者は、かわいい顔の少女だった。
細い首には指の痣が残っており、一目で首を絞めた殺害だと解ったらしい。
木村由衣――
結婚が決まった恋人と同棲し、24の若さで死んだ。
「首にはおまえの指紋がバッチリ残ってたし、その他の被害者が殺害された現場にも、下足痕等の証拠が見つかっている」
「ち、ちがう……俺は、殺してない。愛してる。愛してるんだよ俺は!!」
頭を抱えて、狂ったように泣き叫ぶ。なおも真実から目を背ける棚倉に舌を鳴らす。
胸ぐらを掴み寄せ、狂気が渦巻く瞳を覗き込んだ。
「本当に愛してンなら、俺の首に手をかけてみろ」
だらしなくぶら下がっている腕を取り、首に触れさせてやる。
首に触れた指先がビクッと震え、逃れようと腕を引っ込める。――そんなことさせなかった。
手首を掴み、なんがなんでも絞めるように拘束する。
「やれって言ってンだろ。手間かけさせんな」
「ぃ、やだ!なんで俺が……」
「聞け、順。――これが最後だ。おまえがまともなやつに戻って、罪滅ぼしをする一回こっきりの」
嫌々と首を横に振り、助けてと悲痛に泣く。その口はまだ、少女を求めるばかり。
何度愛してると囁いたんだろう。
囁けたんだろう。
もう思い出すことしかできなくなった彼女を、それでもまだ救えるのは彼だけだった。
「―――おまえに殺されたとき、由衣はどんなキモチだったンだろーな……」
「――っ!」
首に触れていた指に力が込められる。喉仏を親指が押し潰し、呼吸をできなくする。
有り余った力が俺を押し倒して、首を掴んで何度も床に頭をぶつける。
「ぐっ、ぇほっ」
「手を離しなさい!あなたたちも、剥がすのに手伝って!」
様子を眺めていた女警察官が叫び、待機していた警察官が棚倉を引き剥がす。
だが、彼は重く、力が強かった。
腹にめり込む膝のせいで体がくの字に曲がり、息の長続きが難しくなっていく。
「――ゆいはなんとも思ってない!!」
その、言葉を吐くのにどれだけの勇気が必要だったか。――頬を濡らす涙に、そう思わずにはいられなかった。
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