【赤井秀一】【bl】燃ゆる花弁に口づけを (ページ39)

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37話ページ39

はぁ、はぁと肩で大きく息をする。言いたかったことはあれで全部だろう。少し、平静を取り戻してきた様子だ。

「……そうだな。俺が死んだら梟夜組は無くなる。かなの言うとおり……そこの認識が甘かったみてぇだ」

悪い、と短く告げる。それにバツが悪そうな顔をして、

「……責めてるわけじゃないんです。ただ、犬っころ二匹のことを忘れないでいてください。あなたが死んで、一番悲しむ二匹です」

「赤井秀一が死んで悲しいきもちは汲みますよ。でも、俺らにとって大事なのはAさんですから」

かなと同じように忠愛を訴えるひな。上目遣いにこちらを見るその目に柔らかく微笑む。ふわふわの髪を撫でた。

こんな風に真っすぐ忠誠心をぶつけられると、どうしたらいいのか困る。ああ、胸のあたりがくすぐってぇ…

愛されてんなァ、俺。

「うん。俺もおまえらが大事だよ。だから絶対に死ぬんじゃねぇぞ」

「はい!」

「勿論です」

ひなは愛らしい笑顔を浮かべ、かなはやはり凍えた表情をして、それぞれの忠誠を誓う。
今日は一つの目的のために一つになった瞬間だった。

――だが結局のところ、俺が常に狙われる立場にあることには変わらねぇ。

突然死ぬことだってある。病気や、誰かの手によって。……先代から受け継いだ意志をいつかある日突然、打ち砕かれる日が。

甘ったれのまま生きていたら駄目だ。梟夜組を残すには前を向いて進まねぇと。

俺の一番大事なもんはなんだ。

梟夜組――。
それ以外はすべて二の次だろう。かなもひなも替えが効く存在だ。

秀一……おまえが生きていたら俺は迷ってたよ。それぐらいおまえは俺を惑わす謎だった。――でももう迷わない。

「俺が死んだあとも組を残すには……」

「Aさんは死にませんっ」

「ひな、聞け。大事な話をする」

単純な問題ではない。と察すると、その口を閉じ聞く姿勢に入る。かなは既に神妙な顔つきになっていた。

こいつらを選んで正解だった。

「俺は組長だ。死ねば組は無くなる。が、それは後継ぎがいなかった場合だ。つまり――後代が必要だ」

それに二人は驚いたような顔をする。真っ先に口を開けたのは、やはりかなだった。

「それって――女と結婚すると言う意味ですか?」

秀一、俺は前に進む。
死んでしまったおまえを置いて生きていくよ。ま、やることやったら死ぬさ。

それまで見守っててくれよ。