【赤井秀一】【bl】燃ゆる花弁に口づけを (ページ4)

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02話ページ4

「おまえら……ゆいを殺したの、おまえらだったのか!!」

「あなた、何を言ってるの!?煽るような真似はやめて!」

暴走する棚倉にぎょっと目を見張り、慌てて射程距離を取る。

銃口を向け、引き金に指をかける。棚倉は側にあった花瓶を投げつけようとした。

「動かないで!撃つわよ!」

「ゆいを返せええぇーっ!!」

だが、警告に耳を貸さない。

愛しい少女の名を叫んで、花瓶を投げる。これで女警察官の綺麗な顔がぐしゃぐしゃになるだろう。

―――棚倉の手が血飛沫をあげ、すぐ横の壁に小さな丸い穴が空く。

「う、ぐぁ!」

「ちょっ」

花瓶は身を屈めたおかげで避けることが叶い、壁にぶち当たって砕け散る。

傷付いた手を押さえて蹲る。抵抗する気が失せた棚倉に近づき、その手首に手錠をかけた。

「――」

警察官に囲まれる棚倉を横目に、穴の空いた壁に触れる。

形は筒のように丸く、小さい穴だ。そして辺りが黒く変色している。……間違いない、弾だ。

振り返ると、窓は亀裂が走っており同様の穴がある。

「こっわー。スナイパー配置してたんなら言ってよ、オネーサン」

「言ったら意味ないでしょ。それより、さっきのアレはなに?どうしてあんなこと……」

と何か言いかけて、疑いの目を向ける。

そんな居心地の悪い視線から目を逸らす。ぶつぶつと呟いている棚倉の隣に腰を下ろした。

「……ゆいがいない。殺されたから、もう傍に来てくれないんだ」

それはひどく、悲しみに暮れた声だった。

嘆くように。
怒るように。

けれど、その声を聞く限り、それを成す気力がもうないことがわかる。だから――

「うん、殺されたよ。おまえの手に」

「……えっ」

それまでこちらを意識しなかった彼は、初めて存在を認識し俺の目を見た。

儚げに揺れる瞳。
その目の奥に見える、微かな狂気。

「うそだ」

その狂気があったからこそ、棚倉は今まで生きてこられた。

少女と過ごした甘い記憶を失わないように、虚実だと言葉を紡ぐ。

「ゆいは誰かが殺したんだ」

「いいや、順。おまえだ」

「違う。殺してない。うそを言うな」

「おまえが生きているのは、そうであってほしいと望んだ幻想だよ」

「俺は、殺してない。だって愛してたんだ。俺は、ゆいを。ゆいをずっと愛していた」

宝石のように綺麗な眼から涙がこぼれる。
乾いた唇が、ゆいと名を呼び続ける。

そうやって、もういない彼女に縋るしかない。

「おまえは殺したつもりじゃないんだろうけど、殺したのさ。――５月８日に、恋人の木村由衣を……首を絞めて」