【赤井秀一】【bl】燃ゆる花弁に口づけを (ページ20)

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18話ページ20

「なんか最近物騒ですよね」

頬と耳を赤く染め、シャワーを済ませたかなが言う。

喉をくつくつ鳴らして、俺らが物騒なのに?と悪戯っぽく目を細める。

「まぁ、そう言われると何とも言えないんですが……」

と、からかいに肩を竦める。

黒いリボンを手に取り、まだ濡れている髪を結ぼうとする。

その行動にこら、と咎めて手招きする。悩む素振りを見せたが、結局来る。

冷たい頭に触れて、ドライヤーを片手に乾かしてやる。

見た目は完璧なやつだが、意外とその中身は大雑把だ。

まぁ、髪を伸ばしているのは面倒だからではないが。

少し伸びた襟足を指先に乗せて、毛先をいじる。すると、うるさい機械音とかなの声が重なった。

「――」

「なにー?ドライヤーで聞こえねー」

「……から、します……?」

「聞こえねー」

「めざわ、だから……こらしめ……すっ?」

「えー?」

もう我慢できないと言わんばかりに眉間に深い皺を寄せて、こちらを振り返る。

ドライヤーを持つ手を掴んで、スイッチを切った。

「からかわんでください」

疲れたように言うかなに、ごめんごめんと笑って謝る。

まだ乾いていない頭を撫でながら、やっとかなの話に耳を傾けた。

「……あの連中。五年前にも警告したってのに、また勝手な行動してますよね」

「うん。それで?」

「目障りついでに消しましょうよ」

瞳に宿る鋭い眼光。
あの、美しい瞳を持った男が重なる。

その面影から逃れるように目を伏せて、首を横に振る。するとやはり、不満げな顔をする。

確かに自分のシマを荒らされてんのはいい気分じゃない。いい気分なわけあるかっての。

「何も見逃すとは言ってないだろ?また奴さんらに会いに行く、強行手段に出るのはまだだ」

納得がいかないと口を開くが、ドライヤーのスイッチを押して遮る。

これ以上何を言っても取り合ってくれないと理解したらしく、溜息を吐いて前を向く。

「――Aさん、ただいま～っ…………ぁ?」

「おかえり～」
「はぁ、これは面倒な展開ですよ」

夕飯の買い物に出掛けていたひなが丁度帰宅し、かなが疲れたように眉間を揉む。

案の定。
愛らしい顔を鬼の形相に変えて、低い声が響き渡る。

「今すぐAさんから離れろ」

「別に構いませんが、その態度は腹立つんで躾直しです」

「じゃあ俺寝るけど。勝ったら隣、いいよ」

「――絶対勝つ」

「――やってみろ」

そして、翌日起きるとひなは床に転がっており、かなが隣で俺を抱き締めて寝ていた。