クロトの微笑。

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宛もなく車を走らせている時だった。
いつの間にか山奥に来てしまった。




藤「……あ、俺……こんなところまで…」


カーナビの地図を見れば
かなりの距離を走っていたのが
わかる。



そして車から降りて
周りを見渡すと




藤「……こんな場所に？」




綺麗な教会が目に入った。









誰かに呼ばれた気がして…



俺は教会へ向かって歩いた。









もし




本当に神様がいるのなら





ねぇどうか







俺のこと救ってよ。









その時

優しい風が頬を撫でた。





―ギィィィ………






その扉を開くと




北「.....どうかされましたか？」




可愛らしい神父が出迎えてくれた。




目を合わせると
黒い綺麗な瞳に吸い込まれそうで





優しい表情が俺の荒んだ心に
光を灯してくれた。


言ってみようか。





俺の心の奥底の気持ち。







藤「俺って、この世界には必要のない
　 人間なんでしょうか」


北「えっ………」


神父が少し驚いた顔をした。


そりゃそうだよな。
いきなり来た人間が
こんなことを言ってるんだから。





そしてシスターが奥から来て
俺を教会の中へ案内してくれた。








.









シスターがいれてくれたアールグレイの紅茶。

一口飲むと
とても気持ちが落ち着いた。



北「なにがあったんですか？
　 ボクでよければ、お話聞きますよ？」


神父が真剣な表情で俺のことを心配してくれる。


俺は自分に起きた出来事を全て話した。






藤「俺って、もう誰からも必要と
　 されてないんじゃないかって.....」

北「そうでしたか.....。
　 一つだけ言わせていただきますと
　 神様は、この世に必要ない者に
　 命を与えたりはしませんよ？」

藤「命を....与える？」

北「命を紡ぐ、とでも言いましょうか。
　 クロトという女神がいます」

藤「クロト？」




クロト………女神様？




北「クロトとは、ギリシャ神話に登場する
　 三女神のうちの一人です。
　 彼女は人間の命や人間同士の愛を紡ぐ者です」





神父は俺が聞く前に説明をしてくれた。





北「もし、クロト様があなたの命を紡いでいる
　 神様だとしたら、失礼に値します」





その言葉を聞いた時
神父の真剣で真っ直ぐな眼差しに






俺の心臓が
大きく音を立てた。

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