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そうしてシャチは死んだ2 ページ46

「私は今まで織田作のために生きてきたんだ! ずっとずっと、貴方を生かす事だけ考えてた!」
「俺はそんなこと頼んでない」
「言われなくたって助けるさ!」
「だが、勝手に俺の体を乗っ取ったのはお前だろう」
「そうだ。だがわざとじゃないんだ。信じて欲しい」

織田作になるつもりなんてカケラも無かった。
どうして私が織田作になってしまったのか、見当も付かない。

「織田作の人生なのに、勝手に奪ってごめんなさい。返せなくて、ごめんなさい」

助けたいとか言っておきながら、結局死なせてしまっているのだ。
織田作に返したかったな。
もういないと思ってた。会えないと思ってた。
でも、織田作がいるのなら話が違う。
私はいつでもすぐにでも、彼に体を返したのに。その為に私は生きてたんだから。

「ああ、ちなみに俺はまだ生きてるぞ」
「えっ」

ほら、と指差された先に見えたのは、織田作とジイドが倒れている映像と、それから

「与謝野先生?」

与謝野先生の姿だった。
なんでここに。

「乱歩さんが連れてきたんだ。俺とジイドは生き返る」

生きてるのか。織田作が、生きている。
私のやってきたこと、無駄じゃなかった!

「良かった」

織田作が生きててくれればそれで良い。

「子供達を助けられなくてごめんなさい。貴方の人生を奪ってしまってごめんなさい。これから先の人生は織田作に返すよ」
「断る。お前が生きてきた人生だ。もう既に俺のものじゃない」
「織田作のために生きてきた人生だ。貴方が戻らないなら、私が生きる意味ない」

私はそう言い切った。
そのあと織田作は少し躊躇って私に尋ねた。

「お前は、どうなる」
「え?」
「俺が元の体に戻ったら、お前はどうなる」

それは考えてなかった。
ここで答え方を間違えたら織田作はきっと自分の体に戻ってくれない。

「元の体に戻るよ」
「お前は死んだわけではないのか?」
「死んでない。どういう原理か分からないけど、気付いたら織田作の体の中に入り込んでたんだ」
「そうか」

きっと織田作は、自分が戻ることで私が消えてしまう事を気にしてたんだ。でもそれも杞憂。
だから私は織田作に別れを告げた。

「さようなら、織田作。貴方が生きててくれて良かった」
「代わりに生きてくれてありがとう。お互い元の体で、会えるといいな」

私は織田作のそのセリフに曖昧に笑った。
会えると良い。でも、会えないだろう。
だって、私の元の体があるのは次元を隔てた向こう側。
戻るとしたら、元の世界だ。

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翡翠 - 凄い文章力の羅列…裏山しいたけ(古い)何なんだ !あなたは !天才か! ?文豪じゃないのk(( はい。これからもどうか、頑張っていってください !更新を心待ちにしております!!! (2019年12月11日 1時) (レス) id: 72fefee69b (このIDを非表示/違反報告)
らい - 面白い........!これからも更新頑張ってください。応援しています。 (2019年8月9日 2時) (レス) id: 3b0d55ccc1 (このIDを非表示/違反報告)
チューリップ - 織田さんの成り代わりある様でないですよねぇ〜。更新待ってまーす (2019年4月4日 1時) (レス) id: 8fad14733d (このIDを非表示/違反報告)
ひな - とっても面白いです!更新楽しみにしています。頑張って下さい! (2018年12月3日 15時) (レス) id: 81fb36e344 (このIDを非表示/違反報告)
世桜 - 凄く面白くて、一気読みしました!!細かな心情が描かれていて、続きが気になります。更新心待ちにしています。頑張って下さい! (2017年4月10日 0時) (レス) id: f27162b486 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:まあじ | 作成日時:2016年6月12日 11時

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