【文豪ストレイドッグス】シャチはイルカを食べるのだ

シャチは探偵社を所望する7 ページ36

私が探偵社の扉を開けると、何故だか皆に見られた。
何か私におかしなところでもあるだろうか？
服装、髪の毛、髭……思い当たるだけ考えてみたが、どれも当てはまらなかった。
なぜ私は見られてるんだ。
「どうしたんだ？」
私の言葉を皮切りにヒソヒソと話し合いが行われる。
乱歩さんに目線を向けるが、乱歩さんは目の前のお菓子に夢中でこちらなんて興味ないらしい。くそう、相棒ならちょっとぐらい助けてくれてもいいじゃないか。
結局白羽の矢が立った谷崎が恐る恐る、といった感じで私に尋ねてきた。
「あの、織田作さんってお子さんがいらっしゃるんですか？」
言った覚えはないのに、なぜバレている。
いや、乱歩さんがいるなら知れ渡るの必然か。隠すだけ無駄なので、私は正直に言った。
「ああ。5人いる」
「「「5人！？」」」
なぜか乱歩さん以外の全員に驚かれた。
……？
「その、奥さんはどうしたンですか？」
何の話だ。
……あっなるほど、私の子供だと思ってるのか。
「いない。そもそも俺の子ではなくて、孤児を養育してるんだ」
「孤児を？」
私は谷崎の質問に頷いた。
「色々あってな」
私はそう言って誤魔化した。
織田作が“小説家になりたい”と自分の口で言うのはジイドと戦った時と、死にに行く覚悟が出来た時の二回のみ。その他には首領に訊かれた時でさえ、命令ではないなら答えたくないと断ったほどだ。
織田作の心の根幹にあるその夢を、私がベラベラと話していいわけがないから、私は誤魔化すことにした。
「意外です」
「何がだ」
そう尋ねると、谷崎は少し恥ずかしそうにしながら答えた。
「織田作さんは何を考えてるのか分からなくて怖かったンですけど、優しい人なんですね」
随分な言い草だな。
私がそう思ったのと同様に、谷崎もそう思ったらしく「あ、いや、あんまり話した事がなかったから！」と弁明していた。
確かに私はあまり探偵社員と話さない。ボロが出そうだからだ。
本来なら、織田作は探偵社員と会ってすらいない。例外は社長と乱歩さんのみ。
どのように会話をすればいいのか、そもそも織田作であれば彼らをなんと呼ぶのか、それすらも分からない状態で、話し辛かったのだ。

「優しさから子供達を養ってる訳ではないが」

子供たちも、私からそんな同情じみた気持ちは望んでいないだろうし。
私は一応そう言って否定してみたけれど、私に子供がいる事で盛り上がってる探偵社の面々の心には響かなかったようで無視されてしまった。

シャチとイルカの共演→←シャチは探偵社を所望する6

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す