【文豪ストレイドッグス】シャチはイルカを食べるのだ

ぶっ壊せ！3 ページ11

私は行きつけの喫茶店に行き、本を開く。
始まりは緩やかだった。読者を決して置いてけぼりにしない、それでいて読者に寄せてる訳でもなく、信念が感じられる。
私は作者の思惑通り緩やかに引き込まれていった。

本を読み終わった時、思わずため息をついた。
下巻が読みたい、と思った。

私は孤児達から奪い返した財布を手に、会計を済ませ店を出る。
あとは積み重ねだ。
あの喫茶店であの本を開き、あの場所で読み続ける。
ゲームで言う所の日課だ。常に同じ行動を繰り返す事によって、フラグが建つ。

織田作が殺しを止めるまでの算段はついた。
あとは織田作が生きる方法だけ。

……私は今迄散々、お金の為に人を殺してきました。これからは改心して、人を殺さず真っ当に生きたいと思います……

なんて、しょうもない事言う気は欠片もない。

織田作の良さはそこにある。
底抜けに優しいながらに誰にも負けない強さがある。
『お金を手に入れたいから』人を殺す。
『自分が小説家になりたいから』殺しを止める。
どこまで突き詰めても利己的だ。他人の事などお構いなし。
だが、そうやって殺しを正当化せず言い訳せず、全てを背負って生きるその生き様は私には真似出来ないほど素晴らしい物だった。

「織田……作之助」
異能力『天衣無縫』を持つ、絶対に人を殺さない信条を持つ奇妙なマフィア

私が、尊敬してやまない人。
私が成りたい人。成らなければなら無い人。

織田作之助は一体どういう育ち方をすれば、あんな風に世の中を他意なく過ごせるんだ？

未だにその答えは見つから無い。

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