【文豪ストレイドッグス】シャチはイルカを食べるのだ

シャチはイルカを食べるのだ２ ページ2

私が放った弾丸は相手の命を散らした。
ナイフではなく銃だからか、イマイチ実感もわかない。割と何の感慨も湧かなかった。
それよりも今は動揺している。

何故、天衣無縫が使える？ ここはどこだ？ 今の状況は？
何がどうなっているんだ。

構えた銃を降ろし、先ほど絶命したと思われる相手の元へ足を運ぶ。何のためらいも無く殺してしまった事を後悔している訳ではない。殺さねば、こちらが殺られていただろう。
絶命の確認をして、死んでいたら瞳を閉じてあげよう。死者に対する悼みだ。

私の放った弾丸は、一つは肩口、一つは頬を掠め、もう１発は見当たらなかった。障害物にでも当たったのだろう。

詰まる所、死んではいなかった。
私は再度銃口を向け、尋ねた。
「何故こんなことをした？」
「……」
ギリッと歯を噛み締めたかと思えば、ばたりとその場に力なく伏せた。
……毒、か。敵ながら天晴れ。見上げた精神だ。
情報を与えるぐらいなら死ぬ。
私も、見習うべきだろうか。
瞼に手をかざし、すっと下に下げてやる。
混乱してはいるが、幾分か落ち着いてきた。
私は、私ではない。
私はどうやら『織田作之助』に成り代わったようだ。
それも、原作の軸でも、小説版の軸でもない。
幼少期だ。

織田作はこんな小さな頃から殺しをしていたのか。
小説3巻におけるあの強さも納得だ。
そして、何も無いと評されたあの瞳も。

私は織田作を助けられるのではないか。
織田作だけではない。織田作が助けた子供達も再度助けられるのではないか。

そんな希望的観測が頭をよぎった。
奇跡だ。私が織田作に成り代わった事そのものが。
ここで何かを成したところで、原作が変わるかどうかは分からない。
でも、私は織田作を助けたい。
しかし、ここで何かを成す事によって、原作が変わってしまうのかもしれない。
私は文豪ストレイドッグスが大好きだ。織田作の為に原作を壊していいとは到底思えない。
バタフライエフェクト。ちょっとの事で未来が大きく変わる。
そう思うと、足が竦んで動けない。
こんな事、誰にも話せないし、誰も認めないだろう。
自分一人で、解決させなければならない。
それがこんなにも重たい事だとは思わなかった。

そもそも、織田作は、この体に元々いた織田作はどこへ行ったんだ？ 私が乗っ取ったせいで、居なくなってしまった？
だとしたら、この体は織田作のもので、私のものでは無い。
勝手に行動していいのか？ いいはずが無いだろう！

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