教授とヒール ページ4
手洗いを済ませ
看護婦に術衣を着せてもらう
出来上がった鏡の中の自分を見て
どう見ても立派な外科医と
満足げに思う
でも世良が
自分のことを外科医だと思える瞬間は
ここまで
扉が開くと
心電図の電子音が鳴り響く別世界だった
手術台に横たわるのは
76歳のおばあさん
鈴木久子(すずきひさこ)さん
病名は胃癌
術式は胃全摘
術野の外側でサポートするのは
同期の北島
研修三日目にして
上司のあつい信頼を勝ち取り
いち早く受け持ち患者を持たされた
それが今日の手術患者
今回の手術の第一助手は垣谷助手
世良は第二助手だ
垣谷
今日は佐伯教授じきじきの手術だ
同時に羽柴先生もいらっしゃる
迂闊なことをやると
カミナリが落ちるからな
とばっちりは御免だぞ
羽柴先生？
その人は誰だろうか、、、
うなづいた世良は
器械出しの看護婦から
ミクリッツ鉗子の先に
アンズ飴のように付けられた
イソジン綿球を受け取ると
患者の腹部を茶色に染め始めた
上は乳頭のライン
下は恥骨上まで茶色いコートに覆われた
その時
背後で声がした
〇〇
それではダメだ
今日は術野が食道まで及ぶ可能性がある
喉元まで消毒しないといかん
世良が振り向くと
東城大学医学部総合外科学教室の
主宰者、佐伯清剛(さえきせいごう)教授
その人だった
佐伯教授の後ろには
ピンヒールを音をなびかせる
小柄な一人の医師がいた
その医師は
鋭い眼光で世良を射抜いていた
その視線に追い立てられ
世良は消毒エリアを拡大する
一瞥したその医師は
フィルムを展示したシャウカステンに
カツカツと歩み寄り
北島に言う
『あなたは中々
センスがいいのね
でも噴門部の背臥位二重造影像か
欠けているのは惜しいわ』
北島は声の主に気付くと
縮まり小声でいう
北島
申し訳ありません
羽柴先生
佐伯
なあに、
うちの教授に入ってまだ四日目だろう
羽柴もそう言うな
ここまで出来れば立派なもんだ
『教授は甘いんですよ』
佐伯
まぁまぁ
これからも精進したまえ
そう北島の肩をばん
と叩いた
羽柴先生は
気に入らないみたいで
一人ムスッとしていた
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帝(プロフ) - ちゃっちゃんさんへ──ありがとうございます。ドラマだけ見てる方もいらっしゃると思うので敢えて小説のまま書いてある部分があります。これからも精進致します。 (2018年5月7日 11時) (
レス) id: 8b6dd09fc1 (このIDを非表示/違反報告)
ちゃっちゃん - 佐伯教授にも信頼されている様子が分かり、とても良い設定だと思います！これからの展開を楽しみにしています！ (2018年5月7日 10時) (レス) id: fc5666b067 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：帝
| 作成日時：2018年5月4日 10時
