【d!】名無しの給仕係は今日も憂鬱 2

給仕係の朝は早い ページ6

溜息を吐いて部屋に戻る。今日は疲れた。
突然幹部棟に異動になり、労働内容が変わって幹部の内四人とキスして隠していた秘密もほんのり知られてしまった。
厄日以外の何物でもなくてたった一日でげっそりした気がする。

ベッドへ倒れ込むとぼよんとスプリングの効いたマットレスが俺の体を受け止めて大きな揺れが徐々に小さくなっていく。

「あー……不安しかない……」

そう。たった一日だけでこのザマだ。幸先が不安過ぎて神社への参拝を改めて心に決めた。

「……寝よ」

掛け布団を捲って潜り込む。ふかふかの布団……最高……
目を閉じるとすぐに眠気がやって来てくれた。
今日はどうか、夢を見ずに寝れますように。

pppppp……

アラームが鳴る音で目が覚める。快眠で助かった。
柔らかな布団に抱かれているのも悪くは無かったが、名残り惜しく抜け出してグッと伸びをする。時刻は朝5時だった。

クローゼットからジャージを引っ張り出して着替えると幹部棟を出て軽くストレッチをしてから走り出す。
早朝のランニングは日課で、何も考えずに走る時間が大好きだ。
朝の空気は澄んでいて煙草の煙とは正反対のものなのに肺が喜んでいる気がする。

城下町まで降りて大きな池を二周してまた拠点である城までたっぷり一時間掛けてランニングを楽しんだ。
さて、日課も終わった事だしシャワーを浴びて煙草を吸ってから朝食の準備を……と思っていると中庭の方から土を削る音が聞こえてきてひとらんらん様がいるのか？と中庭に足を向けた。
予想通り朝の畑仕事をしているひとらんらん様はホースで水を撒きながら穏やかな瞳で畑を見つめていた。

「お。おはよう給仕君」
「おはようございますひとらんらん様」
「走ってたのか？精が出るな」
「ランニングは日課ですので」

帽子の鍔に手を当てて位置を直すひとらんらん様のこめかみ辺りには土が付いた手で搔いたのだろうか？擦って付いた土汚れが付いたままになっていた。

「ひとらんらん様汚れが……失礼致します」
「え、ん……」

ポケットに入れていたハンカチでひとらんらん様の肌を優しく擦ると驚いたひとらんらん様は目を閉じてそのまま動かないでいて下さった。

「はい……取れました」
「ごめん、ありがとう」
「いえ、お構いなく」

優しく微笑んだひとらんらんに釣られて俺も笑ってしまった。

「あ、今日プチトマトが食べ頃なんだ。良かったら食べてみないか？」
「いいのですか？是非」

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