恋は戦争【TH×You×JK】

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『そうでしたか。すみません、ここらへん詳しくなくて。ありがとうございました』




僕が強く握りすぎたのか、Aは手首を抑えてる。





「ごめん、痛かった?」



　
『いえ、大丈夫です。わざわざ、追いかけてくれたんですか?』





「この時間までバイトしたことないでしょ?危ないんだよ、ここ」




もし僕が来なかったら今頃あいつらに…と、
よくない想像をした。




そしたらまた、
モヤモヤ、イライラして。




それが顔に出てたらしく、
Aが申し訳なさそうに頭をさげる。




「あー。えっと。A…さん、は、しっかりしてそうに見えるけどなんか抜けてるよね」




僕がなんとか笑うと、安心したように、
小さくすみません、と言った。




「駅まで、一緒に行くね」




『はい、ありがとうございます』




今度は断られなくて、ほっとする。




僕達は、ほぼ無言で駅まで歩いた。




駅まで続く、カラフルなロッキングブロックとか、
つぶれて寝てる大学生とか、
転がる酎ハイの缶とか、




目に飛び込んでくる情報はたくさんあったのに、
隣で真っ直ぐに前を向くAが
何を考えているのか気になって、
何にも頭に入ってこない。





「明日シフト入ってる?」




『ランチに入ってます』




「シフト入ってなくても、店に行けばまかない食べさせてもらえるって知ってた?」




『そうなんですか?』




明日、僕はシフトに入ってないけど、
Aがランチにいるなら行こうかな。




軟膏のお礼もしなきゃいけないからって、
脳内で言い訳をしながら、
僕達は改札前で別れた。



　


別れ際にAが言った、




『おやすみなさい』

　

に、ドキッとして、
手を振るのも返事をするのも忘れてしまった。












次の日、家の近くのケーキ屋で焼菓子を買い
バイト先に向かった。




客は4組しかいなくて、
キッチンのヒョン達と店長に挨拶をしてから
空いてるテーブルに座り、
授業のレポートを広げる。




『お疲れ様です』



Aが、店長からの差し入れだと言って
レモネードを置いてくれた。




いつも通りのポーカーフェイスだけど、
少しだけ心を開いてくれたような気がする。




声のトーンがいつもより少しだけ明るかった。





ツヤツヤの髪を一つに結んで、
制服のスカートは膝丈。



何のアピールなのか、めちゃくちゃミニにする子もいたのに、規定通りに着ている所や、ネイルもせずに清潔な長さで切ってる所に好感がもてる。

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