最低な同居人【JK】

海底に引きずり込む奴×You ページ35

ジョングクが、おかしい。





さっきまで、普通に話してたのに、
急に抱きしめてきたかと思えば、
何かを思い出したように真っ青になって。





手を繋いで隣を歩いてたのが嘘みたいに、
今は私の数歩前を、黙々と歩いてる。









“俺なんて本当、どうしようもない、くだらない男だよ”










あれは、どういう意味?







初めて見た自嘲の表情は痛々しくて、
どう慰めていいか分からなかった。









『ジョングク』








早足で隣に並んでみる。








その横顔は、相変わらず綺麗なのに、
こっちも見ないし返事もない。








車のクラクション。






信号待ちをしている男子学生の笑い声。





遠くから聞こえる救急車のサイレン。






そのどれもまるで耳に入ってない様子だったのに、
ジョングクの足を止めたのは、スマホの着信音だった。








画面を見つめてしばらく呆然としたジョングクは、









『出ないの?』








私には答えずに、







「先、帰ってて」









そう言って、今来た道を戻り始めた。







私は、ジョングクがスマホを見て
目を見開いた時に呟いた、







「ハンナ…」







って声を何度も頭の中で反芻しながら、
一人でマンションに帰った。








彼女、かな。







でも、あの声とあの表情…。







なんでもっと、幸せそうじゃないんだろ。






それに、ジョングクって、特定の女の子とは
付き合わないって言ってた。








じゃあ、ハンナさんは
ジョングクの特別な人?





そっか。
まぁ、いくら暴君でも、
心の底から好きな人くらい、いるよね。







チクリ、と胸が痛むのは、
私がさっきまで手を繋いでたから?







ボーッとしながら玉ねぎを切っていたもんだから、
包丁が滑って、指を切って、








プツプツと血が滲んできたのに、
私はそれを眺めたまま、まだジョングクのことを考えてた。








『痛…』








一緒に暮らして、一週間。







まだ、たったそれだけだ。









ジョングクが、何に苦しんでるのか、
全く検討もつかないけど、




胸はざわつく一方。








なんだか、このままアイツが
帰ってこない気がして。










カトクしようかなとか、
電話しようかなとか、
色々考えたけど、

　




居ても立っても居られなくなって、
マンションの階段を駆け下りた。







乾燥した空気で噎せるし、
心臓が、バクバク言って、
足も上がらない。

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