黄色い光

34."普通" ページ36

「わぁ！月が綺麗だね！」
「んだねぇ…」
「もー落ち込むの禁止！」
「別に落ち込んでないし」

夕暮れだった空も今では少し暗くなってきた
特に意味のない散歩だけど、大分落ち着いてきた

「所でミナトくん」
「はい？なんでしょうかAちゃん」
「この手はなんだべ？」
「僕の手がAに触りたいと言っているからです！」
「ふぅん…」
「ぃいいじゃん！昔はよく繋いでたんだしっ！」
「やっぱミナト赤ちゃん返りしてる？」

やっぱり今日のミナトはちょっとおかしい
普段なら手なんて握って歩かないし、つか私が恥ずかしいから嫌なんだけど気づいたらガッチリ繋がってた

「…やっぱりAとは一緒がいい」
「…どんな理由であれソレを火影が認めたなら受けいなきゃダメだよ」
「でも…っやっぱりおかしいよ」

強く握りしめるミナトの気持ちも分かる
分かるから嫌になるんだ
所詮私たちはただの下忍であって、選ぶ権利も何もないただの餓鬼で…
だけど…いや、だからこそ餓鬼らしく足掻けばいい
それが"普通"の子どもだったら…

「ミナト」
「！」
「…離れても一緒なんだべ？だったら大丈夫…私はちゃんといるよ」

繋いだ手をそっと引っ張りミナトを抱き寄せ呟いた
私には何も出来ない
受け入れることしか出来ない
ミナトが理不尽な事に意義を唱える気持ちも分かる
それが普通であって…私には出来ないことだから

「…ふぅ、ズルいなぁ」
「ん？」
「こう言うのは本当は男がやるんだよ？」
「あらあら…それは失礼しま…ッ！？」

左頬に感じた感触
意識が追い付いた頃には目の前に悪戯っぽく微笑むミナトがいて…
はい？

「ふふっ！仕返し♪」
「どっちがズルいだ！！不意討ちとか卑怯だぞっ！！」
「なんだって先制した方が勝ちなんだよ〜っ」
「先制なら私の方が先だ！…って待てコラッ！」
「えー待ったら絶対殴るでしょ？」

キャキャ笑いながら逃げ回るミナトを全力で追いかけた
少しでもミナトとの時間が欲しい
でも抗えない事は分かった

「邪魔だな…」
「ん？何か言った？？」
「なんも…って隙やりっ！」

だからやることは決まった
私は強くならなきゃならない
ミナトの傍に居たいから
その為なら…私は……

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