階級・甲の癸さん拾弐

536話　伊黒side ページ29

伊黒「はあ…」



…舐めていた。



幼い頃がまさか此処まで純粋だとは…。



寝るために布団に寝転んでいる癸は、鏑丸を腕に巻き付けながら戯れていて。



…普通子どもは蛇を見たら怖がるものではないのか。



いや、癸に普通を求めるのが間違っているのか…。



というか、子どもならとっとと寝ろ。



伊黒「寝ないのか。」



『…昨日も今日も勉強も運動もしてなくて…。』



眉を下げながらそう言う癸に頸を軽く傾げてしまう。



…別に良いだろう、其処まで気にしてやる必要性はない。



『…また、失望させちゃう…。』



悲しげにそう呟いた癸は、今にも泣き出しそうな顔をしている。



伊黒「…此処に居る間は勉強も運動も過度にやらなくて良い。」



何があったかは知らないが、それで失望する者なんて此処には居ない。



『…母が、』



伊黒「…？」



『いずれ認めてくれるなら…私は、頑張るから…。』



…ふと思い出すのは、食事会でのこと。



確かこいつは…家族に嫌われていると言っていた。



だが…一言も、自分が家族を嫌っているとは言わなかった。



嫌われて尚…嫌いにはなれなかったと言うのか。



伊黒「…A。」



『…？』



俺の方を見ながら首を傾げるAの頭を撫でる。



伊黒「心配するな、お前を認めてくれる者はこの先多く現れる。

無理して認められようとしなくていい…ありのままのお前を、俺達は認めている。」



だから、大丈夫。

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