階級・甲の癸さん捌

328話　竈門side ページ9

バサッバサッ



「伝令！！伝令！！伝令アリ！！炭治郎・桜花・禰豆子三名ヲ拘束！本部ヘ連レ帰ルベシ！！」



鎹鴉がそう言った途端、累くんに攻撃をしていた最終選別に居た子と…さっきまで綾木さんを悪く言っていた人が攻撃を止める。



『…拘束しなくていい、妹ちゃんは僕が背負う…赤髪くんは桜花ちゃんお願い。

大丈夫逃げたりはしません…それをしたらどうなるか分かっているはずなので。』



綾木さんが指示を出せば、みんなが従う。



…さっきの人は渋々だけど…。



…桜花が俺をまた背負ってくれて…その温もりを感じながら…目を瞑り、考える。



…綾木さんからは、とても優しい匂いがする。



とても優しくて…その匂いがするだけで、とても癒されて…あたたかい気持ちになれる。



そんな匂いが…ずっとしている。



…それと同時に…凄く悲しそうな匂いもするんだ。



“辛い”、“悲しい”、“苦しい”、“泣きたい”、“泣きそう”、“怖い”…



色々な辛い感情が有るのに、綾木さんはずっと泣かないで…笑っていようとする。



そんな綾木さんの笑顔を…守りたいって思ったんだ。



綾木さんが夢に見ているのは、とてもじゃないけど俺には考えられないことで。



でも…それのために、真っ直ぐと前に進んでいて。



…綾木さんの手伝いをしたい…って、俺はいつの間にか考えるようになった。



綾木さんの優しい匂いに…辛くても出さない所に…俺は惹かれているんだと思う。



いずれ…綾木さんが辛さを出す所が俺になって欲しい。



…どうにか、救ってあげたい。



『おやすみ、赤髪くん。』



そう言って俺の頭を撫でてくれる綾木さんの手の温もりを感じ、意識を手放す。



…綾木さん…あの人に殺意を向けたのは、どうしてですか？



禰豆子を、桜花を…殺そうとしたから？



それとも…他の何かがあるんですか？



…あなたの“面”に隠れているものを…見せてくれませんか？



…一人で苦しんだり…しないでください。



あなたを大切に思う人は…沢山居るんですから。

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