階級・甲の癸さん捌

357話 ページ38

『僕にはね、大切な妹が居たんですよ。



血の繋がりはないけど…血の繋がりのある家族よりも大切な妹が。



誰とでも分け隔てなく関われて…それでいて誰より家族を大切にする。



自分の信じた道を歩み、人の言葉に惑わされない。



僕はそんな妹に…何度も何度も救われたんです。



ほら、僕って弱虫だし怖がりだし臆病者でしょ？



それなのに妹はそんなの関係ない…寧ろ、守るって言ってくれて。



だからこそ僕はその妹を守るために生きると決めたんです。



何度も全てを諦めて辞めたくなったときも。



本当の家族と上手く行かず、自暴自棄になって壊れそうになったときも。



妹はいつだって僕に寄り添って…声を掛け続けてくれた。



どんなに酷い対応をしても、どれだけ僕が無視をしても。



笑顔で、いつもみたいに声を掛けてくれて…笑ってくれた。



妹が僕の生き甲斐で…生きる意味で…存在価値でした。



存在価値を失った僕を救ってくれたあの日から…ずっと。



そんな妹がね、壊れてしまう時が訪れたんです。



なんとなくその前兆に気が付いていたくせに…僕は妹の“大丈夫”を信じてしまいました。



それがあの子を傷付けていたことにも気付かずに。



あの時もしも僕があの子の変化に気が付いていれば…何かが違ったのかもしれない。



今でも変わらず笑い合えていたかもしれない…。



…そう思うと、自分に腹が立って仕方ないんですよ。



だからこそ僕は自分のことが許せない…自分のことが大嫌い。



…そんな僕と家族になってくれた人を、どうにかしてでも守りたい…。



…これが、僕が家族に…“血の繋がりのない家族”に、執着する理由なんです。』

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