8話☆ ページ10
『…ふう、』
そんな声が聞こえたかと思うと、いきなり視界が明るくなった。
…とは言え、夜だから明るいって言ってもそこまで明るいわけではないけど…。
『終わりましたよ。』
彼(確かテンマさん)はそう言い、私から羽織を取っていた。
…テンマさんの服や顔には返り血がかかっていて。
ゴシ
『…何をしているのです。』
気が付いたら私は、スカートのポケットに入っていたハンカチでテンマさんの顔に付いた血を拭き取っていた。
「いやっ…これは、その…折角綺麗な顔をしているのに、もったいなく感じて…。」
『…もったいない、ですか。』
そう言ったテンマさんは…しゃがみこんで居た私から離れ立ち上がり、空に浮かぶ月を見上げた。
何だかその姿は儚くて…放っておいたら、今にも消えてしまいそうで。
『…僕はとっくに、血に染まっているというのに。』
…この時代に生きている…ましてや、新選組に所属しているんだ。
それは当然…仕方のないこと。
でも…考えてもみれば、私と歳の変わらない男の子が戦っている…。
そういうことになるんだ。
でもこの人達は強い志を持っていて…それを悲観的に考えない。
死さえも覚悟している…死んでも仕方ない、そんな時代…。
…それを考えたら、少し悲しくなって…何故か、私が泣きそうになった。
何も関係ない…これから殺されるかもしれない、私が。
…何でかなぁ…不思議だなぁ…。
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