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次の日、教室に入るといつもの騒がしい声が聞こえてきた。
みんな1人の男の子の周りに集まっていて
その輪の中心の男の子は私のことを見つけ思い切り手を振った。
「A!昼写真見せてくれよ!」
「わかった」
あまり注目が向けられるような声のかけ方をしないでくれ、と思った。
周りの女子からの視線が嫌だった。
私は静かに席に座り本を読み始めた。
本は私の表現の幅を広げてくれた。
本を読んでいる間は複雑な事を考えずに済んだ。
時は進んで昼休み。
良い写真が撮れる場所を探すため、チャイムとほぼ同時にカメラを持って教室を後にした。
「ちょっと待てよ」
そんな私の腕を後ろから掴む男の子。
みんなの中心の男の子。
「あ、絹張くん。ごめんね。これ写真」
今一番話したくないと思う相手だった。
故に私はそそくさと封筒を押し付けるように渡した。
「あ、ありがとう」
彼の顔に少し、困惑の色が見えた。
「じゃあ私は写真撮りに
それがなんだか気まずくて、その場から離れる事だけを一心に考えていると、それを見透かすように彼は私の話を強引に切り上げた。
「ちょっと待って、話しようぜ」
誘われると断れない私は彼に着いて行く他なかった。
何より真剣に向けられた彼の視線が少しだけ嬉しかった。
「ここなら誰もいねえな」
とある教室の前で立ち止まる彼。
「ここ、1年の講義室でしょ?勝手に使っていいの?」
「いいんだよ、怒られたら謝りゃいいし。
ほら、ここ座って」
私の心配をよそに次から次へと物事を決めてしまう絹張君もそうだが、講義室を開けたままにしておく先生の管理の杜撰さも、私を呆れさせた。
言われた通りに絹張くんが座った隣の席に座ると、先程よりも距離が近くなった事を意識せずにはいられなかった。
「昨日の俺どうだった?」
そんな私をよそに、私が渡した写真を見ながら話しかけてくる絹張くん。
「かっこよかったよ」
「だろ?惚れた?」
冗談交じりに言う彼に、つい本音を返したくなってしまう。でも、私は悲しい事実を知っている。
「惚れても、絹張くんには好きな人がいるじゃん」
「へ?」
「昨日ずっと絹張くんの写真撮ってたら、最後の最後に一人の女の子のこと見てるの見ちゃった。
ごめんね」
私は何に謝っているのだろう。
「えー、お前勘良すぎ。これ内緒な」
なんて幸せそうな顔をして笑うから胸がますます痛くなった。
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花梨 - 楽しみにしてます!! (2018年11月6日 18時) (レス) id: e6157cc2f4 (このIDを非表示/違反報告)
橘雫(プロフ) - 花梨さん» ありがとうございます!色々と修正してもっとキュンキュンして頂けるような小説にしていきますので、お楽しみに! (2018年10月6日 22時) (レス) id: 1c9cad39f6 (このIDを非表示/違反報告)
花梨 - 最高すぎです!文才が神すぎです。終始きゅんきゅんでした。こういう感じのガンガン書いてください!めっちゃよみます!フィッシャーズ最高!!! (2018年10月2日 21時) (レス) id: e4eb9fe5a5 (このIDを非表示/違反報告)
橘雫(プロフ) - 書き直しを始めました。急ピッチで進めているため、誤字等あるかもしれません。その場合はご指定いただけると嬉しいです。 (2018年9月25日 15時) (レス) id: 1c9cad39f6 (このIDを非表示/違反報告)
なな(プロフ) - すごいですね!最初からこういうのにしようって考えてたんですね!?素晴らしい!! (2018年1月1日 22時) (レス) id: 2870e13e2c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:橘雫 | 作成日時:2017年4月17日 19時