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「Aはどうなの？」と、真鯛のカルパッチョを口に運びながら瑞稀くんが聞く。
「私もね、……結婚すると思う」
「そっか。相手いるんだ」
「一応…ね」
彼らが入籍する少し前、私にも彼氏ができた。
由真の紹介で出会った彼は私より6個上で、最初から私よりもずっと“2人の将来”を意識していて、つい先日も結婚の話を持ち出されたところだ。
「どんな人？」
「優しい人だよ、すごく」
昔の恋を引きずっている私をありのまま受け入れ、それでもいいと愛を注いでくれる。
「好きなの？」
「…………嫌いじゃないよ」
どちらかと言えば好意だってあるだろう。
でも、あと一歩。
私は踏み込めずにいた。
まるで同じところで足踏みをしているみたいに、私はあの冬から今もずっと同じ場所にいる。
忘れたくても忘れられなかった。
忘れられるはずなんてなかった。
ずっと当たり前に隣にいたせいで、
春にも、
夏にも、
秋にも、
冬にも…
どの季節にも彼との思い出が溢れてしまっているから＿＿
「作間」
思い浮かべていた人物の名を挙げられて、はっと息を呑む。
「Aは作間と付き合うと思ってた」
「……え？」
「だって、作間ずっとAのこと好きだったじゃん」
「いやいや、そんなわけないでしょ」
「気付いてないのAだけだよ。まあ、俺も作間の口から好きだって直接聞いたわけじゃないけどね」
冗談だと笑い飛ばす私とは対象的に、彼は真面目な顔をして言った。
それから次に聞こえた言葉に、私はまた耳を疑うことになる。
「でも、そうでもなきゃ第1志望を蹴ってAと同じ大学行かないって」
第1志望を蹴った…？
何それ…どういうこと……？
「え…？だって作ちゃん…入試の日に熱があって試験受けられなかったって…」
「作間には黙ってろって言われてたけど。試験は受けてたし、合格だってしてたよ」
そんなの知らない。聞いてない。
ただ彼は間が悪かったって、だから滑り止めのこんな大学なんだってずっとそう思っていた。
「作間にとって大事だったのはどこに行くかじゃなくて、誰といるかだったんだって」
「…っ」
「それくらいAのこと大事に思ってたんだよ…って俺が言うことじゃないか(笑)」
「これ、作間には内緒ね」
いたずらをした無邪気な子どもみたいな笑顔はいつかの“彼”と重なった。
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の - 凄く感動しました。作ちゃんがもう作ちゃんで場面が想像できました。瑞稀くんが結婚するって言った時は泣いてしまいました。片想いって本当にしんどいです。作ちゃん最後は報われてよかったです。久しぶりにこんな胸が痛くなりました。 (2021年8月31日 23時) (
レス) id: 2c22fbd9c9 (このIDを非表示/違反報告)
asumin110(プロフ) - これの作間くんがあったら是非読みたいです！！！ (2021年3月6日 8時) (レス) id: 310d1e6e98 (このIDを非表示/違反報告)
ちぇりー - 今更感想すみません。最後めちゃめちゃ泣いたし井上担なのにすごく幸せな気持ちになりました……読んでよかったです！！ (2019年12月4日 1時) (レス) id: 533c7622c3 (このIDを非表示/違反報告)
じ ゅ き * - 呼んでて涙出てきちゃいました!! これからも作品楽しみにしてますっ (2019年10月24日 19時) (レス) id: 3ad5a89366 (このIDを非表示/違反報告)
ニャニャコ - めちゃくちゃ良かった！ (2019年8月24日 15時) (レス) id: 6881cb58fa (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：りゅりゅ
| 作者ホームページ：https://twitter.com/ryuryu_movie?s=09
作成日時：2018年11月19日 11時
