恋を知ったOL【灰谷竜胆】

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『はじめまして、圭介の紹介で来ました。AAです。』





「おー、場地さんの！俺、松野千冬っす。一応ここの経営者。」





私は今、ペットショップに来ていた。



圭介が昔から仲の良いという、彼の店で働いてみないかという提案を受けたのだ。





『今日からよろしくお願いします。』





「こちらこそ。」





爽やかに笑う彼は、圭介に何となく似ている気がした。



店内には沢山の動物がいて、見ているだけでも楽しい。





「何か分かんない事あるっすか？」





一通り説明を終えて問いかける松野さんに、感謝を述べる。





『ありがとうございます、松野さん。あの、私に敬語使わなくて大丈夫ですよ？』





社長から敬語を使われるってなんか変な気分だ。





「場地さんの紹介の人にタメ口なんかきけないっすよ。逆にタメ口でいいっすよ、歳も上だし。」





『そ、そう？ですか？』





付け足す様な変な敬語に、千冬くんは笑った。



初対面でいきなりタメ口とか戸惑いがあるな…。



てか圭介ってどういう立ち位置なん？





「あと、名前で呼んでほしいっす。慣れないんで。」





『千冬くん…？』





遠慮がちに呼ぶと、そっちのほーがいいっすねと笑顔を向けられた。



気さくな雰囲気の彼に、緊張の糸は解れていく。





「千冬ー、昼飯どーする？」




奥の倉庫から声が聞こえ、振り向くと金髪と黒髪が混じった男性が出てきた。





「？？誰？」





お店のエプロンを身に付けているし、会話からして千冬くんと仲が良さそう。





『こんにちわ、AAです。』





「場地さんの紹介で新しい人入るって言ったじゃないっすか。」





呆れた声で言う千冬くんに、彼は何かを思い出した様にこちらへ近づいてくる。





「あ、そうだっけ。俺、羽宮一虎。一虎でいいよ。」





「はぁ……、この店のもう1人の従業員っす。」





彼が同僚である事を明示した彼は、大きなため息をついて呆れ顔だ。



その日は初出勤という事もあって、私だけ定時前に帰された。



なんというホワイト企業。



帰り道、駅に向かう途中の花屋で彼の名前を見つける。




“リンドウ”






『あの、これください。』





家に花を飾る様な習慣はない。



けれど、何故か私はその花を手に取っていた。



理由は明白なのだけれど。

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