雪解け水8滴 ページ9
─
「だな、」
「アリサちゃん」
「あ、ゴメン……」
何を映し出しているのかよく分からない顔でアリサを咎める雛。
しんと、静まりかえってしまった店内。
スッと、自分の口から言葉が紡ぎ出される。
「今まで迷惑かけてごめんな、皆」
「伊月は、私の親友。
それは何があっても変わることはない。
けれどもう、いじけるのはやめにするよ」
本当は、命日にするのが普通の墓参り。
それを毎年毎年この時期にしているのは、皆が私に気を遣ってくれていたからだ。
コップを軽く持ち上げて、言った。
あの日から、ずっと言えなかった言葉を。
「…………誕生日おめでとう、伊月。乾杯」
「……乾杯」
「かんぱい」
「伊月に」
虎太朗が、雛が、幸大が口々に言って掲げる。
重なりあった六つのガラスが、冴えた空気に澄んだ音を響かせた。
なあ、伊月。
私さ、好きな人が出来たんだよ。
もしかしたら知ってるかもな、
去年いたし。
ねえ、今までありがとう。
忘れないから。
きっとこれで、本当の意味で、
あんたの全てを受け入れられたんだ。
有難う。
大好きだよ。
ハッピーバースデー、伊月。
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camellia(プロフ) - すぃさん» ありがとうございます! SideStoryの方もよろしければお願いします! (2019年10月20日 12時) (レス) id: 24ff41186f (このIDを非表示/違反報告)
すぃ - 面白かったです! (2019年10月20日 11時) (レス) id: 045c20b509 (このIDを非表示/違反報告)
camellia(プロフ) - シリウス1315さん» ありがとうございます!! ストーリーは途中途中色んな方向に飛んでってしまってましたが、なんとか終わらせられて良かったです。次回作はもう少しお待ちくださいすみません() SideStoryもよろしくお願いします! (2019年8月22日 7時) (レス) id: 24ff41186f (このIDを非表示/違反報告)
シリウス1315 - 完結おめでとうございます!ストーリーも読み応えがあって、とても面白かったです!毎回お話更新を楽しみにしながら読ませていただきました。SideStoryおよび次回作も頑張ってください!応援してます! (2019年8月22日 2時) (レス) id: ff0fc740f2 (このIDを非表示/違反報告)
camellia(プロフ) - シェリーさん» 遅れてません、大丈夫ですよ。2回も労いのお言葉こちらこそありがとうございます!!!SideStoryに乞うご期待です!!! (2019年8月17日 22時) (レス) id: 24ff41186f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:camellia | 作成日時:2019年7月19日 17時