雪解け水25滴 ページ26
─
「…………」
言葉の後、当然のように沈黙が舞い降りた。
すん、と顔に似合わず鼻を鳴らすとソファから立ち上がり、耳に手をやる。
ペリペリと、明智さんの顔をしたマスクが剥がされていくのを、私は見ていた。
目を逸らさずに。
銀髪の下からは、柔らかそうな黒髪。
色素の薄いそれだったはずの瞳は、満月のような金色に。
出で立ちだけが少しばかりの違和感だった。
「……何時から気付いてたんだい?」
「いや、だってさ。
そもそも私、明智さんに家教えてねえし。
後玄関、鍵かけてたし」
「……見越してたんだね、」
「ああ」
コイツから来た手紙に送り返したのは、家の合鍵。
封筒と宛名と差出人名だけを変えた手紙をそのまんま、ポストに入れたことになる。
まあ真実を言うと鍵くらい面と向かって返しに来やがれこのド阿保とは思ってたのであれで良かったのかもしれない。
「気づいてもらえなかったらこれ置いて帰るつもりだったけど、良かった。」
「…………あ、そ」
言いたいことはそれだけか。
「……若葉さんを来るように差し向けたの、お前だろ」
「……」
「彼女とは仲良くなったよ。」
そして聞いた。
彼女の家の近くの公園で、小さな子ども達にマジックを見せていたピエロの仮面を付けた男がいたこと。
そのピエロから勧められた本を探しに、あの図書館に足を運んだこと。
「面と向かって親子とは言えてないけど、彼女もきっと薄々勘づいてる。」
会って、二つだけ感謝することができた。
生んでくれて、ありがとう。
この世に生を与えてくれて。
貴女の子に、産んでくれてありがとう。
貴女から受け継いだ同じこの瞳を、好きと言ってくれる人に出逢えた。
…………けど、彼女への感謝とコイツへの怒りは別。
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camellia(プロフ) - すぃさん» ありがとうございます! SideStoryの方もよろしければお願いします! (2019年10月20日 12時) (レス) id: 24ff41186f (このIDを非表示/違反報告)
すぃ - 面白かったです! (2019年10月20日 11時) (レス) id: 045c20b509 (このIDを非表示/違反報告)
camellia(プロフ) - シリウス1315さん» ありがとうございます!! ストーリーは途中途中色んな方向に飛んでってしまってましたが、なんとか終わらせられて良かったです。次回作はもう少しお待ちくださいすみません() SideStoryもよろしくお願いします! (2019年8月22日 7時) (レス) id: 24ff41186f (このIDを非表示/違反報告)
シリウス1315 - 完結おめでとうございます!ストーリーも読み応えがあって、とても面白かったです!毎回お話更新を楽しみにしながら読ませていただきました。SideStoryおよび次回作も頑張ってください!応援してます! (2019年8月22日 2時) (レス) id: ff0fc740f2 (このIDを非表示/違反報告)
camellia(プロフ) - シェリーさん» 遅れてません、大丈夫ですよ。2回も労いのお言葉こちらこそありがとうございます!!!SideStoryに乞うご期待です!!! (2019年8月17日 22時) (レス) id: 24ff41186f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:camellia | 作成日時:2019年7月19日 17時