雪の日に拾ったのは犯罪芸術家でした。 Forth

若葉17枚 ページ18

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　「中性的な名前ですよね、彼女」




　茫然としていて、急に意識が引き戻された。




　「そう、ですね」



　平静を装わなければいけなかった。



　同僚と言えど自分の生い立ちまで話すことは普通ない。





　ここで動揺したら不審がられるだろう。



　横の彼にとっても、先程の彼女にとっても、私はただの来館者だ。




　気づかれてはいけない。




　私が母と。





　自分を捨てた親ということを。





　「あそうだ、そう言えば」


　「？」




　目をやると山本さんが言葉を続ける。





　「彼女と話してて少し思ったんですけど。



　……今までこちらの方面はあまり来られなかったんですよね？





　今日みえたのは、何か来られるきっかけがあったんですか？」





　来たきっかけ？



　聞かれて手元のハードカバーに目を落とす。





　「この、シリーズの本がここなら揃ってると聞いて…………あれ？」





　聞いたのは…………ああ、そうだ。




　言葉とは裏腹に、その記憶はあっさり頭に浮上してきた。





　「少し前に公園で、子ども達にマジックを見せている人がいたんです。」






　彼(・)に、聞いたのだ。








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