雪解け水11滴 ページ12
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不思議な感じだった。
お互いひたすらに黙っているのに、それほど息苦しさは感じない。
波長が合う、とでも言うのだろうか。
もそもそとパンを含んで、清涼飲料水で流し込むと、見計らったように口を開かれる。
「あの……すみません、司書さんってお幾つなんですか?」
「…………今年で24ですけど」
急な問いにも一応返す。
「そうですか……」
「何か?」
「いえ、その…………
私、娘がいるんですけど。
今も元気だったらあなたくらいの年頃なのになって思って」
また、鼓動がうるさく鳴り始める。
ドク。ドク。
「亡く……なられたんですか?」
恐る恐る問うと彼女は自虐的に力なく笑い、
首を、横に振った。
「施設に捨てたの。
大きな楓の木が植わっている所にね」
ドクン。
「…………!!」
鮮やかに脳内で巻き戻され再生される。
時期になると、学校の行き帰りをする度に踏みしめていた楓の落ち葉。
「
「ええ、」
「若葉さん。
お子さんの名前は、覚えてますか?」
もしも覚えていてくれたら。
水面に雫が落ちていくように、心が揺れる。
期待と切望が大きくなる。
汗ばむ手を隠すように握りしめた。
「…………ダメね、思い出せないわ……」
「…………そう、ですか」
そう返すのが精一杯だった。
24年も前に手離した子の名前。
覚えてる方が不思議だよな。
「あの、良ければ聞かせてもらえませんか」
「え?」
「あ、無理でしたら良いです。ただ……」
『自分の母がどんな人生を歩んできたのか、知りたくて』
「……同じ名字のよしみってことで」
「………………全てが始まったのは、27年も前のことなの」
静かに、彼女の半生が。
私のルーツが語られだした。
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camellia(プロフ) - すぃさん» ありがとうございます! SideStoryの方もよろしければお願いします! (2019年10月20日 12時) (レス) id: 24ff41186f (このIDを非表示/違反報告)
すぃ - 面白かったです! (2019年10月20日 11時) (レス) id: 045c20b509 (このIDを非表示/違反報告)
camellia(プロフ) - シリウス1315さん» ありがとうございます!! ストーリーは途中途中色んな方向に飛んでってしまってましたが、なんとか終わらせられて良かったです。次回作はもう少しお待ちくださいすみません() SideStoryもよろしくお願いします! (2019年8月22日 7時) (レス) id: 24ff41186f (このIDを非表示/違反報告)
シリウス1315 - 完結おめでとうございます!ストーリーも読み応えがあって、とても面白かったです!毎回お話更新を楽しみにしながら読ませていただきました。SideStoryおよび次回作も頑張ってください!応援してます! (2019年8月22日 2時) (レス) id: ff0fc740f2 (このIDを非表示/違反報告)
camellia(プロフ) - シェリーさん» 遅れてません、大丈夫ですよ。2回も労いのお言葉こちらこそありがとうございます!!!SideStoryに乞うご期待です!!! (2019年8月17日 22時) (レス) id: 24ff41186f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:camellia | 作成日時:2019年7月19日 17時