95. ページ47
「では本日より、ワーウ領ワーウ州の感謝祭、
「乾杯！」
予定通りに始まり、おれが挨拶と音頭を取る。
龍鬼祭りの語源はここに守護龍がいることと、吸血鬼の子孫がこの地を治めていることから、合わせてできた名前だったりする。
お互いのグラスを合わせるわけじゃないけど、軽く持ち上げて一口飲む。
晴れてよかった。
あと、ウラタ様たちに何事もなくてよかった。
「くぁ……ぁふ」
「どしたん、ルシフ。眠そうやね」
グラス片手にバレないようにあくびをすると、右隣から声が聞こえた。
誰だろうかと、涙を拭って声のした方を見ると、センラ様がこちらを覗き込んでいる。
あぁ、センラ様か、なんて思ってしまうのは気が抜けているからだろうか。
「……センラ様。いかがなさいましたか」
「いや、ルシフが眠そうにしてるから話しかけたろー思て」
いつもどおりの顔で話しかけた理由を聞くと、存外子どもらしい答えが帰って来た。
おれのことを気にするよりも、街の人と話したほうが十分楽しいだろうに。
あまり王都の市井にも行っていないようだし、たまの触れ会える機会を無駄にしてどうする。
「……そうですか」
「あれ、いつもよりキレあらへんね。いつもやったら『おれと話すより街の人やウラタ様と話したらどうですか』って言うやん」
「わかってるならやったらどうですか」
「もちろんやるで」
おれのモノマネをするセンラ様に思ったことを返すと、笑顔で一歩近づいてきた。
一歩下がる。
当たり前のようにもう一歩近づいておれの手を掴むと、街の人がたくさんいる方へとおれを誘導しに行った。
「うらたーん。連れてきたで」
「センラお手柄！」
「ルシフ、なんかいつもより笑顔やね」
「んー？ あ、ほんまや」
ウラタ様たちのいる方へ誘導されたと思ったら、一方的に話しかけられる。
いつもより笑顔、か？
たしかに最初は作り笑いくらい浮かべていたけど、その後すぐにやめたし、そんなことないと思うのだが。
「意外とルシフのことがわかってきた、ってコト……！？」
「知らないですけど。せっかくですし、街の人と話してきたらどうですか。おれは設営をしてくれた人と話がありますので」
はっとした顔で言うウラタ様の答えをバッサリと切り捨て、その場を去る。
設営をしてくれたのは路地の方や、スラム予備軍あたりでたむろしていた大人たち。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 2人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
のんしゅ(プロフ) - ほんとですか！？ 教えてくださりありがとうございます (2022年6月30日 19時) (
レス) id: e89ed18301 (このIDを非表示/違反報告)
優(プロフ) - オリジ/ナルフラグが立っているようですので、外していただくようお願いします。 (2022年6月30日 8時) (レス) id: 09c503bb24 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
