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「そうですね、冒険者ギルドの三軒隣りにある食堂はご飯が美味しい、噴水は人が多く待ち合わせをしているところが見れて活気を感じられる、などですね。皇妃様やタナカの出身地である東の小国の文化を模した地区もありますよ」
会話が続かなくなってきたので無理やり話題を変える。
夜の街は遠目でしか見せられないが、昼なら比較的治安もしっかりしている。
明るいし、自衛も護衛されることも出来るだろう。
ウラタ様に間違っても傷をつけたら忠臣として失格である。
「夜はだめなの?」
「安全が確保できません」
「うらたん、こればっかりはしゃあないんととゃうかな」
こちらをまっすぐ見つめて問いかける。
すぐに答える。
センラ様もおれに同意するようにウラタ様をなだめてくれる。
スラムとか自体は隠す気はないし、そこはおれの至らない点だからおれが悪い。
でも、それで王太子殿下を危険に晒すわけにはいかない。
「まあ、それでもしうらさんが怪我したらルシフとか、腹切って詫びそうやもんなぁ」
「そこまではしないです。領地を返還して、慰謝料たくさん払って、今後一切関わらないことを誓うでしょうが」
「重いし、ルシフと話せなくなるのはヤダ」
冗談めかしたサカタ様に返しつつ、おそらくおれがやるであろうことを言えば、ウラタ様は嫌そうに顔をしかめる。
そんな顔をされても、可能性の話でしかないし。
この話で諦めてくれたのなら良かったけれど。
「ついた!」
がたん、と馬車が比較的大きく揺れたと同時にサカタ様の嬉しそうな声が聞こえた。
サカタ様の言葉に釣られるように窓の外から後ろを見ると、見覚えのある、懐かしい建物が進行方向の先に見えてきた。
すでに庭には入っている。
「到着でございます」
「お疲れ。タナカ、スミス」
「いえいえ。滅相もございません」
タナカにドアを開けられ、まず一番におれが出る。その後、位の低い順にエルさん、センラ様、ウラタ様と手を貸しておろしていく。タナカとスミスにもお礼を言えば、タナカは何でもないような、スミスは眉尻を下げた顔をする。
「ありがとな」
「はっ、いえいえ、ルシフ様の御学友にもそう言っていただけるとは幸いです」
素晴らしい笑顔でウラタ様はお礼を言う。その言葉にスミスは恐縮した様子を見せる。俺の友人としてでも駄目なのかな。もしかしたらエルさんも駄目なタイプ? 元平民で常識のないやつなのに? って、スミスは知らないんだっけ。
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のんしゅ(プロフ) - ほんとですか!? 教えてくださりありがとうございます (2022年6月30日 19時) (レス) id: e89ed18301 (このIDを非表示/違反報告)
優(プロフ) - オリジ/ナルフラグが立っているようですので、外していただくようお願いします。 (2022年6月30日 8時) (レス) id: 09c503bb24 (このIDを非表示/違反報告)
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