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「ではこれより、人族、魔族間の会談を始めます。
参加者は人族領インレット国国王代理、皇太子ウラタ・インレット様。魔族領ホークアイ国魔王、ゼオル・ホークアイ様、秘書のクレア・ガーネルト様。
中立であり人族と魔族の血を引く一家、ワーウ家がこの度司会を努めさせていただきます。ワーウ家当主代理、次期当主のルシフ・ワーウです」
会談を始める言葉を紡げば、空気が一変する。
先程の緩い空気から、ピリッとした真剣な空気に変わる。
おれがまず口を開く。
今回のクレアさんの担当は、会話内容を保存すること。
速記で書いたものを、しっかりと紙に書き写し、活版印刷技術で印刷をする。
一つはこのまま魔王城地下に保存される。
残り二つはおれとウラタ様がそれぞれ持って帰ることになる。
「これらは魔族領、人族領、ワーウ家の三箇所に同じ内容の文書が保管されます。隠蔽などを行ってもそれらが証拠となり、国際犯罪として認められますのでご注意ください。
では、今回の議題は王都の城壁外にある人族領の村の一つ、スレイ村を襲撃した魔族についでです。
人魔不可侵条約に基づき、この者を死刑にしましたが、このことに異論はありますか?」
「問題ない」
まぁ、ここまでの返答は予想通り。
問題はここから。
人族を襲った魔族を殺したことに対して、犯罪だと訴えない同意と、葬儀の費用はどうするか、そもそも葬儀をするかの話に発展させていかなければならない。
「では次に、件の魔族を死刑にしたことについて、国際犯罪として訴えないことに同意するということでよろしいですね?」
「あぁ、もちろんだ。誓ってそんなことはしない」
ゼオルの言葉を聞き、次はウラタ様に焦点を当てる。
ウラタ様の方に向き直れば、緊張したように背筋を伸ばす。
そこまで緊張しなくてもいいのではと思うけれど。
「次にウラタ様、代理とは言え、あなたの意見が国の総意になることを念頭に置き、これからの質問にお答えください。
魔族領の国民に対し、『復讐である』等の理由で攻撃をしないことに同意しますか?」
「もちろん」
自信に満ちた表情で返される。
これで条約が破棄されない限りこれからも国家ぐるみで動くことはないだろう。
後は、これからのことだな。
遺族への賠償金をいくらにするか、葬儀代はどうするか。
メンタルケアにもメンタルケアカウンセラーを呼ばなければならないからお金がかかる。
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のんしゅ(プロフ) - ほんとですか!? 教えてくださりありがとうございます (2022年6月30日 19時) (レス) id: e89ed18301 (このIDを非表示/違反報告)
優(プロフ) - オリジ/ナルフラグが立っているようですので、外していただくようお願いします。 (2022年6月30日 8時) (レス) id: 09c503bb24 (このIDを非表示/違反報告)
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