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室内に戻り、いつも羽織っている黒い羽織を掴む。帯の間に愛刀を挟み込んで、序でに護身用の小刀も、少し迷ったが持っていく事にした。
近くに置いたままだった辰哉の蔵書の上に、掛けていた首飾りを置いておく。
その昔、辰哉と出会う前に翔太や涼太、佐久間と阿部と暮らしていたとき、出掛ける、という書き置きの代わりに身に付けたものを一つ置いておく、という決まりをつくったのが始まりだったろうか。
彼奴らなら判るだろ、と一人合点して、扉を閉めた。
此方へ、と言って歩き出した青年に、照は低い声で問いかける。
照「…んで、そのお仲間の場所ってのは判ってんのか。」
「はい。幸いにも烏天狗はある程度なら御互いの場所が判るものでして。…恐らく、ですが、彼の山の中にある寺院かと。」
照「…ちっ、依りにもよってあそこかよ…厄介だな。」
照が舌打ちしたのも訳はない。寺院や神社の類いには、大抵護り神や本尊の力が強く蔓延っている。そして、その力は妖の力に多少なりとも干渉してくるのだ。
無論、照とて例外ではない。只でさえ相手が同じ鬼神の類いだと聞いているのに、其の場所が寺院、ともなれば照の表情が暗くなるのも必然だった。…依頼だから、仕方がないか、ともう一度深くため息をつく。
暫く黙って烏天狗の後を付いて歩いていた照は、突然立ち止まった青年に驚いて顔をあげる。そこに建っていたのは、かなり昔に捨てられたのだろう、随分朽ち果てた寺院。
建物に近づくと、独特の妖気が鼻について照が顔をしかめた。そっと目を閉じ、気を読むのに意識を集中させると、確かに何者かの気配を感じる。
念のため、と青年を下がらせると、刀に手をかけて、扉を蹴破り、室内に飛び込む。その中には囚われた烏天狗と鬼……が、いる、想定だったのだが。
どうみても伽藍堂な室内に、照の眉間がしかめられる。一体どう云うことだ、と問おうとして振り向いた、筈が、膝ががくり、と折れ、刀が手から零れる。後頭部に鈍い痛みが熱を持って走り抜けて、殴られたのか、と理解したのは床に倒れてからだった。
「…何だ、案外警戒されないんですね…ふふっ、最悪の場合、『死なない程度に』大人しくしていただく予定でしたが、無用な心配でしたか。」
照「…っぐ、て、めぇ、なんの…！」
傷口がやけに熱い。力が入らない。何かの術を掛けられたのか、と震える手で小刀を掴むが、床に落ちる。草履の音が増えたのをぼんやり感じながら、照の目は静かに閉じられた。
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莉月(プロフ) - 優さん» こちらこそリクエストありがとうございました！楽しんでいただけていたら幸いです。これからもよろしくお願いします！ (2021年1月27日 7時) (
レス) id: d1f373beb4 (このIDを非表示/違反報告)
優(プロフ) - お話書いて頂きありがとうございました！これからもお話楽しみにしています！ (2021年1月26日 21時) (レス) id: a7e52b77bc (このIDを非表示/違反報告)
莉月(プロフ) - リクエストはここで締め切らせていただきます！リクエストしていただいた皆様、ありがとうございました！お話になるまで、少々お待ちください。 (2021年1月6日 11時) (レス) id: d1f373beb4 (このIDを非表示/違反報告)
莉月(プロフ) - さのちゃんさん» 最後の一枠なので大丈夫ですよー！リクエストありがとうございます。 (2021年1月6日 11時) (レス) id: d1f373beb4 (このIDを非表示/違反報告)
さのちゃん(プロフ) - まだリクエスト大丈夫でしょうか？橙くんが怪我して敵に捕まって黒くんがすごく怒るお話を読みたいです。よろしくお願いします！ (2021年1月5日 21時) (レス) id: f84afddcf2 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：莉月 | 作成日時：2020年5月30日 12時
