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閑話其の参:鬼の目にも■ ページ48

…うつら、うつら、うつら。読んでいた書物を力の抜けた腕に載せたまま首を揺らしていた照の少し尖った耳に、トントン、と小さな音が入る。

涼太辺りが帰ってきたのだろうか、と静かに片側の紅を開くが、涼太ならとっくに入ってくるだろう。…お客さんか、と立ち上がり、少し崩していた着流しを直して扉の前に立つ。

気配を感じたのか、扉の向こうから「…萬屋さんとは、こちらでよろしいでしょうか?」と若い男の声がした。

照「…あー、悪ぃな、今俺以外出払ってんだ。急ぎじゃないなら後での方が…」

がらがら、と音をたてて引き戸を開けた照が、申し訳なさそうに眉を下げてそう言うと、扉の向こうに立っていた人の良さそうな青年がにこりと微笑んで口を開いた。

「大丈夫です。僕は『貴方』に依頼があって来たので。」

照「え?…俺に?」

「はい。岩本照さん…いえ、鬼の頭領『岩本家』のご子息様。」
照「っ!何者だてめぇ…!何で此処の事知ってやがる…!」

途端に殺気を露にして刀の鯉口を切った照に、おー、怖い怖い、と言いながら青年はおどけたように両手をあげた。

「ご安心を。貴方のお仲間には危害は加えませんので。御家の話も、口外する気は更々ありませんしね…さて、依頼の話に移っても?実を言うと此方もかなり切羽詰まった状況でして。」

胡散臭い、としか言いようが無いような笑みを貼り付けて首をかしげる青年に、一つ舌打ちをすると、刀から手を離す。

何の用だ、と問う代わりに睨み付けると、有り難う御座います、と呟いて突然手をぶんっ、と顔の前で振った。何事か、と身構えた照の前に現れたのは、些か見覚えのある黒い羽。

どうやら客人は此方の世界の住人ではないらしい。照が目を見開くと、一度俯いていた青年の顔がゆっくりと上がり、真剣な表情へと変わる。何処ぞの知的な男を彷彿とさせる烏天狗の青年は、静かに口を開いた。

「…鬼の貴方に御願いがあって参りました。…実は、僕の仲間が拐われたのです。どうやら、その者達の頭には角らしいものがあったとの噂。貴方達の評判は知っています。…仲間を、助けていただきたい。」

照「…っ!」

その言葉に、照は目を見開く。暫く考え込んだ後、準備してくる、と小さく呟いて中へと戻った照の後方で、確かに青年の口角が歪に上がった。


ーーーーーー
遅くなってすみません。これからまた更新再開します…

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莉月(プロフ) - 優さん» こちらこそリクエストありがとうございました!楽しんでいただけていたら幸いです。これからもよろしくお願いします! (2021年1月27日 7時) (レス) id: d1f373beb4 (このIDを非表示/違反報告)
(プロフ) - お話書いて頂きありがとうございました!これからもお話楽しみにしています! (2021年1月26日 21時) (レス) id: a7e52b77bc (このIDを非表示/違反報告)
莉月(プロフ) - リクエストはここで締め切らせていただきます!リクエストしていただいた皆様、ありがとうございました!お話になるまで、少々お待ちください。 (2021年1月6日 11時) (レス) id: d1f373beb4 (このIDを非表示/違反報告)
莉月(プロフ) - さのちゃんさん» 最後の一枠なので大丈夫ですよー!リクエストありがとうございます。 (2021年1月6日 11時) (レス) id: d1f373beb4 (このIDを非表示/違反報告)
さのちゃん(プロフ) - まだリクエスト大丈夫でしょうか?橙くんが怪我して敵に捕まって黒くんがすごく怒るお話を読みたいです。よろしくお願いします! (2021年1月5日 21時) (レス) id: f84afddcf2 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:莉月 | 作成日時:2020年5月30日 12時

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