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「?っ、どうしたの?」

急に顔を上げ、じっとこちらを見つめる少年に思わず亮平がたじろぐ。少年は小さな声で、ぼそりと呟いた。

「…僕、聞いたことある。そのことば。たぶん僕の大事なもの…。」
「ってことは、君の名前はラウールであってるの?…西洋の名前が付いてるなんて…君の身元の手がかりがひとつ見つかったね。」

ラウール、ラウール…と小さく繰り返す少年の姿を横目にニコリと微笑んだ亮平は、俺の方でも調べておこうか?と近くの紙と筆をとった。

「らう、る?…うー、呼びづらいぃ…ラウでもいい?」
「!はい!」

西洋語に慣れていないからか、舌が回らない辰哉は、散々難しい顔をした後に、結局短い名前で呼ぶことにした。それでも嬉しそうに顔を上げたラウールの目があまりに綺麗で、思わず頭をふわふわと撫でる。

「兎に角、先生とか、都の方に詳しい人に当たってみる。次に行くのは一週間とちょっと後になるから、気長に待ってて貰えると助かるよ。」

「分かった。悪いな、手間かけて。…あ、そういやさ…」

その後、二人で様々な話をしていると、思っていたより時間を食ったようで、ラウールは辰哉の膝に頭を置いて夢の中へ旅立っていた。

「ちょっと話しすぎたな…そろそろ帰るわ。本当、有難うな。」
「いえいえ。困った時はお互い様、でしょ?」

お邪魔しました、と家を出ようとした辰哉を、あ、ちょっと待って!という亮平の声が呼び止める。不思議そうに振り返った辰哉に手渡されたのは、小さな石。

「?何これ。ただの石?」

「それを帰る時、肌身離さず持ってて。最近この辺りで良く妙なものが目撃されてるの。なんかあったら怖いし、お守り代わりに。ちょっと弱いかもしれないけど、無いよりマシになると思う。」

「分かったけど…そんなものほんとにいるのかよ。亮平はそういうの信じないのかと思ってた。」

「俺は怖くないんだけど…どうやら辰哉は寄せやすいみたいだし、心配だから。気をつけて帰ってね。」

寄せやすい、という言葉や妙に心配そうな亮平の顔がやけに印象に残ったものの、幾度となく通った道である。少ししか離れていないし、歩けばほんの四半時程で着くのだから心配ない、と笑い飛ばした。

行灯を借りて、外に出ると、辺りは夕焼けも消えかけの薄暗い道。確かに少し気味が悪いな、といつもより足早に草履を前へ踏み出した。

しかし、何か様子がおかしい。

いつの間にか、二人は知らない道に足を踏み入れてしまっていた。

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莉月(プロフ) - 優さん» こちらこそリクエストありがとうございました!楽しんでいただけていたら幸いです。これからもよろしくお願いします! (2021年1月27日 7時) (レス) id: d1f373beb4 (このIDを非表示/違反報告)
(プロフ) - お話書いて頂きありがとうございました!これからもお話楽しみにしています! (2021年1月26日 21時) (レス) id: a7e52b77bc (このIDを非表示/違反報告)
莉月(プロフ) - リクエストはここで締め切らせていただきます!リクエストしていただいた皆様、ありがとうございました!お話になるまで、少々お待ちください。 (2021年1月6日 11時) (レス) id: d1f373beb4 (このIDを非表示/違反報告)
莉月(プロフ) - さのちゃんさん» 最後の一枠なので大丈夫ですよー!リクエストありがとうございます。 (2021年1月6日 11時) (レス) id: d1f373beb4 (このIDを非表示/違反報告)
さのちゃん(プロフ) - まだリクエスト大丈夫でしょうか?橙くんが怪我して敵に捕まって黒くんがすごく怒るお話を読みたいです。よろしくお願いします! (2021年1月5日 21時) (レス) id: f84afddcf2 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:莉月 | 作成日時:2020年5月30日 12時

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