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涼「余所見してんなよ…『狐火桜花』ッ!』

天狗「ぐぁっ…!」

攻撃を顔に叩き込まれた天狗の頭がのけぞる。その隙を見逃さず、照が低く飛んで刀の鯉口を切った。

銀の光が空中で閃くと、天狗がぎっ、と歯を軋ませる。

天狗「小童共めが…無駄だと言うておろうがァ!」

天狗がそう叫んだ途端、照の刃が空を切る。目を見開いた照の後ろで、天狗の袖がひらりと揺れた。

照「…当たって、ない…?」

天狗「老体に無理をさせおって…お望み通り一人ずつ捻り潰してくれようか。」

其の言葉と共に、膨大なほどの殺気と妖気が空間を満たす。意識を刈り飛ばされそうになって、辰哉はぐっ、と足に力を込めた。

亮「…あんまり余裕も無い、か。蓮と康二、一寸手伝って!…天駆ける黒き使いよ、我が身を依り代に其の力を示したまえ。『妖変化・烏天狗』!」

心臓の辺りでぎゅ、と着物を握ると、その手をばっ、と広げる。優雅で洗練された其の動きに思わず辰哉が見入っていると、薄浅葱色の着物が若竹色と純白の袴に変わる。背中に生えた夜の色の大きな羽が、一際異様だった。

蓮「参謀に頼まれちゃ本気出すしかないな…黒き魔物よ、今其の目に力を宿せ。『妖変化・百目』」

康「…ほんまに嫌やねんけど…まぁ、めめが行くなら。冬の精霊よ、其の妖気を喰らい尽くし我に与えよ!『妖変化・…雪女っ!』」

蓮が詠唱しながら包帯をしゅるり、と解くと、其の背中を守るように立った康二も目を閉じて口に手の甲を当て、大きく息を吸いこむ。刹那、吹き上がった雪の向こうには純白の着物を纏った康二と、十字に襷をかけて、剥き出しの腕の目を爛々と光らせた蓮が立っていた。

亮「俺が上から援護する。蓮は『目』を使って翔太の援護と指示をお願い。康二は照達と彼奴を攻撃して!」

蓮、康「了解。」

辰哉が呆気に取られていると、亮平がばさり、と羽ばたいて地面を蹴る。同時に康二も鋭く飛び出し、蓮は右目を手で覆った。

蓮「…見つけた。天狗、お前の目『借りる』。」

ぼそり、と呟かれた言葉に目をやると、口角をあげて不適に笑う蓮がいる。其の上を舞っている亮平も、にやりと笑うと呟いた。

亮「さて、総力戦と行きますか…」

何時もとは違う雰囲気を感じたのか、其れとも天狗の妖気に当てられたのか、ラウールがぎゅ、と辰哉の手を握る。どうしようもない無力感を感じて、辰哉はそっとラウールを抱き寄せた。

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莉月(プロフ) - 優さん» こちらこそリクエストありがとうございました!楽しんでいただけていたら幸いです。これからもよろしくお願いします! (2021年1月27日 7時) (レス) id: d1f373beb4 (このIDを非表示/違反報告)
(プロフ) - お話書いて頂きありがとうございました!これからもお話楽しみにしています! (2021年1月26日 21時) (レス) id: a7e52b77bc (このIDを非表示/違反報告)
莉月(プロフ) - リクエストはここで締め切らせていただきます!リクエストしていただいた皆様、ありがとうございました!お話になるまで、少々お待ちください。 (2021年1月6日 11時) (レス) id: d1f373beb4 (このIDを非表示/違反報告)
莉月(プロフ) - さのちゃんさん» 最後の一枠なので大丈夫ですよー!リクエストありがとうございます。 (2021年1月6日 11時) (レス) id: d1f373beb4 (このIDを非表示/違反報告)
さのちゃん(プロフ) - まだリクエスト大丈夫でしょうか?橙くんが怪我して敵に捕まって黒くんがすごく怒るお話を読みたいです。よろしくお願いします! (2021年1月5日 21時) (レス) id: f84afddcf2 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:莉月 | 作成日時:2020年5月30日 12時

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