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目の前に立つ、石造りの鳥居を見上げて辰哉は、はぁ…とため息をつく。社も、鳥居も、神社の中はどこも草だらけ。随分長い間人が来ていない事は明白だった。
(やっぱ俺くらいしか、こんな山奥の神社に来るやつはいないよな…俺も随分久しぶりだし。先にお参りするか…)
背負っていた籠を鳥居の横に置いて、袂から1枚貨銭を取り出す。草を踏み分け、古ぼけた本殿を覗き込んだ辰哉の目に、思わぬものが飛び込んできた。
｢っえ、人…?!…死んでるのか？｣
本殿の中、神の御前に、『人が倒れていた』のだ。こんな山奥の、誰も立ち入らないような神社の本殿に、何故人が倒れているのか。
見る限り、青年よりは少年に近い。身に纏う着物は、ボロボロではあるものの刺繍が入っている高価そうな物だった。
あまりに奇妙なこの状況に、辰哉は暫し呆気に取られて立ち竦んでいた。漸くはっ、と我に返ると急いで裏手に回り、扉を開けた。
…十中八九生きては居ないのだろうが、見過ごすことも出来ない。せめて墓には入れてやりたいな、と顔を覗き込んで、辰哉は再び絶句した。
それは決して、その少年の顔がこの世のものとは思えないほど整っていたからでは無く。
覗き込んだことで下に垂れた辰哉の癖毛が、少年の鼻の前で僅かに揺れたのだ。
弱いものの呼吸はある、
｢っ生きてる?!ねぇ、君、大丈夫？起きて！｣
体を揺さぶっても、ピクリとも動かない少年。焦って自分の腰に触れた手に、丸い感触が触れて、はっ、とした辰哉はそれを取り出した。
｢ごめん、ちょっと口開けるね…｣
取り出した丸薬を、少年の口に含ませる。暫く待っていると、うっすらと少年の瞼が開いた。
｢!起きた…ねぇ、君、大丈夫?｣
｢…ここどこ…？…おにいさん、だれ？｣
｢あ、ごめん、びっくりしたよね…俺は辰哉、って言います。薬屋をやってるんだ。ここは神社の中なんだけど…覚えてない？と言うか、自分の名前、分かる？｣
｢わかり、ません…｣
うーん、と唸った辰哉は、数秒考えた後、座り込んだまま俯いている少年に手を差し出す。え、と顔を見上げる少年に、困ったように笑いかけると辰哉は言葉を紡いだ。
｢…とりあえず､うちにおいで｡ここでいつまでも過ごす訳にはいかないだろ？｣
｢でも、僕がいたら迷惑じゃ…｣
｢迷惑じゃないよ。食べ物もあるし。それに、俺の知り合いに君の身元探し手伝って貰おうと思ってさ。…立てる?｣
弱々しく首を振る少年をよいしょ、と背負うと、辰哉は本殿を出た｡
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莉月(プロフ) - 優さん» こちらこそリクエストありがとうございました！楽しんでいただけていたら幸いです。これからもよろしくお願いします！ (2021年1月27日 7時) (
レス) id: d1f373beb4 (このIDを非表示/違反報告)
優(プロフ) - お話書いて頂きありがとうございました！これからもお話楽しみにしています！ (2021年1月26日 21時) (レス) id: a7e52b77bc (このIDを非表示/違反報告)
莉月(プロフ) - リクエストはここで締め切らせていただきます！リクエストしていただいた皆様、ありがとうございました！お話になるまで、少々お待ちください。 (2021年1月6日 11時) (レス) id: d1f373beb4 (このIDを非表示/違反報告)
莉月(プロフ) - さのちゃんさん» 最後の一枠なので大丈夫ですよー！リクエストありがとうございます。 (2021年1月6日 11時) (レス) id: d1f373beb4 (このIDを非表示/違反報告)
さのちゃん(プロフ) - まだリクエスト大丈夫でしょうか？橙くんが怪我して敵に捕まって黒くんがすごく怒るお話を読みたいです。よろしくお願いします！ (2021年1月5日 21時) (レス) id: f84afddcf2 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：莉月 | 作成日時：2020年5月30日 12時
