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「じゃあAちゃんもお風呂入って落ち着いたことだしデートしよっか」
「そうだねえ何しようか」
「ん〜することないな」
「そうね…こんなにもすることがないと思わなかった」
そう、おうちデートをしようにもすることがないのだ。
改めて何かデートらしきものをしようにも今更何も思いつかない。
とりあえずスマホで検索をかける。
「ねえ辰哉見て〜」
「ん？」
「おうちデートと言ったら！みたいなのが書いてあるんだけど全部いつも通りの私たちなんだよ」
「え〜じゃあすることないじゃん」
まじかよ〜と考え込み始めた辰哉。
たぶんウケ狙いで考える人のポーズで考え事してる素振り見せてるけどなんかそれすらもカッコよくて。
本当に私の彼氏でいいのかな、と心配になる。
「ねえ辰哉」
「ん〜？」
「ぎゅーしたい」
「いいよおいで」
いつもは絶対に言わないことだけど。彼女なんだからいいよね。
辰哉膝の上に向かい合う形で座って私から抱きつく。
辰哉もそれに応えるように優しく抱きしめ返してくれた。
幸せだと思った。
でもそれと同時に。
ふと、私だけがこんなに幸せでもいいのかと頭に浮かんだ。
よく考えてみれば私は大介を利用して勝手にその関係を切って傷つけてしまっているし、
翔太だって私が事情を知らなかったとはいえ傷つけてしまった。
誰かを傷つけて手に入れたこの幸せに私は手放しで喜んでどっぷり浸かり込んで。
これで本当にいいんだろうか。
私が悩んでいるのに気付いたのか辰哉が私の髪を撫でた。
「Aちゃん。今、何考えてる？」
「ん…なんか、こんな幸せでいいのかなって」
「いいと思うよ〜。Aちゃんは十分頑張ってきたんだから」
「でも…」
「大丈夫。俺がもう何も心配しなくてもいいくらい幸せにするから」
こんなこと言ってるけどあと10日後にはいなくなるんだなと思って素直に喜べない私はやはり可愛らしくなくて、ヒロインとは程遠い。
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作者名：雪野真哉 | 作成日時：2024年3月15日 22時
