はじめまして。結婚してください。【紫】② (ページ46)

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あれから1ヶ月。
翔太と別れてすぐの頃と大して変わらない普通の日々に戻った。
仕事をして帰ってきて1人でお酒を飲んで寝て。その繰り返し。
何も変わらない。変わっていない。

部屋が少し広く感じるだけ。
寝る時に少し寒いだけ。
彼のインクの匂いがしなくなっただけ。
部屋に、彼のわずかな服や私物がまだ置いてあるだけ。

1ヶ月も経てば悲しみなんてかなり薄れてそれなりに精神も安定している。
少女漫画のヒロインみたいに彼を思って涙するなんてこともない。

『今俺の隣で笑ってるヒロインは翔華ちゃん。脇役なんかじゃないんだよ』

そんなことを彼は言っていたけど、結局私はヒロインではないのだ。
だって、“恋愛漫画(ラブストーリー)はハッピーエンド”。
私の今の状況は、どう見てもバッドエンド。
主人公に可愛く笑いかけるヒロインにはなれなかった。

少しの間だけでも私にヒロインの気持ちを体験させてくれた彼には感謝でしかない。

でも、無性に彼に会いたくなって。
久しぶりに彼の漫画を開いてみた。
表紙はしっかり彼ー深澤辰哉で、隣には可愛らしいヒロイン。
やはり彼にはこう言う可愛い子の隣があっている。

ページを1ページ、また1ページとめくっていくと少しの違和感に気づいた。
イラストの一部が、少しだけ変わっているのだ。
内容も、登場人物の言動や服装なんかもそのまま。
だけど辰哉の服装や見た目だけ少しづつ違っているのだ。